7月18日に「『大学学費無償化』の嘘ー改憲案の危険性」という記事を書きました。この時は憲法との関係を中心に書いたのですが、9月18日の夕刻にこんなニュースが飛び込んできました。
『来年4月から導入される低所得世帯を対象とした高等教育の修学支援制度で、国立大に通う学部生のうち約1万9千人は授業料の負担が増加する見通しであることが20日、文部科学省の調査で分かった。』
新制度で国立大生1万9千人の授業料負担増 | 2019/9/20 – 共同通信 https://t.co/AvtmqrbBbv
— FREE 高等教育無償化プロジェクト (@FREE20180913) September 20, 2019
どうしてこういうことになるのか、その仕組みも明らかになりました(写真をクリックしていただくと記事の内容が読めます)。
『来年4月から導入される低所得世帯を対象とした高等教育の修学支援制度では、現行の国立大の授業料免除や減額の対象になっていた学部生の半数以上にあたる2万4千人が、支援が受けられなくなったり、支援額が減少することが20日、文部科学省の調査でわかりました。』
https://t.co/P9vLple5HG— FREE 高等教育無償化プロジェクト (@FREE20180913) September 21, 2019
7月の記事にも少し書きましたが、すべての国公立大学には現在でも授業料減免(免除や減額)の制度があります。私立大学も同様です(すべてにあるかどうかまでは把握していませんが、多くの大学が備えているはずです)。
国立大学の運営経費は毎年国から交付されるわけですが、授業料減免のための経費を「来年度からは支給しない」ということになったのです。そして前の国会で成立した「大学等就学支援法」は授業料免除の対象を著しく限定しているため、これまでであれば減免を受けられていた人たちの半数にあたる学生が減免を受けられなくなるということです。
「無償化」はやっぱり嘘だった…という感じがします。正直な感想としては、私が在学していた時にこれが起きていれば、学業を続けられなくなっていたかもしれない…と思います。なお、公立大学と私立大学については、まだわかりません。来年度の国からの補助金がどのように積算されるのかは不明ですし、その上でどう対応するのかは大学によることになるでしょうから、蓋を開けてみないと(来年度にならないと)全体的な傾向はわからないかと思います。
おりしも「教育の公的支出割合、 OECD加盟国で日本は最下位」というニュースが。結局のところ、教育への支出を増やさずに、いわゆる文教予算の中でやりくりをするので上記のようなことも生じるわけです。
教育の公的支出割合 日本は最下位 OECD加盟国で | NHKニュース https://t.co/Dmo8fFp4CP「私費に教育が依存すると経済的に苦しい人が質の高い教育を受けられないおそれがあり、持続可能性に懸念が残る」。
— 舞田敏彦 (@tmaita77) September 14, 2019
そして国立大学では授業料の値上げが相次いています。
一橋大学、千葉大学、東京工業大学、東京藝術大学と国立大学が徐々に学費を値上げし始めてるし、東大も博士のサポートを財務省がしなくなったしもう日本には期待しないことにしました… pic.twitter.com/1XVekUZeI2
— ぷれくん (@chemist_todai) September 15, 2019
国立大学の話ばかりを書いていますが、それは現在のところ国立大学の情報しか入手できていないためです。公立大学も私立大学も、補助金等の形で税金が投入されています。行政は同じ方針で大学に臨んでいるわけですから、国立大学で起きることは決して対岸の火事ではありません。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。