~いくつになってもその人らしく暮らすための福祉用具の紹介や、適切な排泄ケアの講習・研修を全国で行っている浜田きよ子さん。排泄と介護を取り巻く問題にいち早く注目した浜田さんは、ケアの基本は姿勢管理、それを左右するのが排泄だとおっしゃいます~
――浜田さんが福祉用具や排泄ケアに興味を持ったきっかけを教えてください。
大学では社会学を学び、卒業後も社会のために何が出来るのかずっと模索していました。そんな中で母が要介護になり、重い糖尿病で目が見えなかったために入院中ベッドから下りる時に転倒し、危ないからおむつをするように言われたんです。母は嫌がっていましたけど、それで元気になるならと思っていたら、あれよあれよという間に悪くなって、因果関係はわからないですが、1ケ月程で亡くなってしまいました。この亡くなり方は母にとっても家族にとっても非常に不本意でした。医者は命を守ろうとしたかも知れないけれど、全然守られてなかったような。社会がどんどん高齢化していく時代でしたから、死を守ることが自分にとっての課題のように思えて、おむつやベッドなどの用具に関心を持つようになりました。ある人に相談した時に看護師や理学療法士などの専門性を持った人はどうしてもその専門性から人を見るから、「生活」という視点で暮らしを考える人がいた方が良いと言われ、医学的なことを勉強しつつ生活者の視点から用具を見て行こうと思ったのが、1987年でした。
その頃、福祉用具の見本市や介護用品店に頻繁に行きましたが、入った時に楽しくないんです。排泄も入浴も人が処理される物のように扱われているような気がして。でも、使う人が主体的に使える便利な商品、自分が出会って嬉しいと思えるような自助具も探せば結構あって、それらをもっと普及させるため、88年に老いを支える生活用品の店「銀ちゃん便利堂」を始めました。コンセプトが面白かったこともあって店はものすごく繁盛したんですが、相談を主にしようと「高齢生活研究所」を始め、さまざまな情報を提供できる場所として2003年に「むつき庵」を開設しました。さらにその翌年からは医療や住環境、食事など幅広い視点から排泄の困りごとにアドバイスできる排泄ケアのスペシャリスト「おむつフィッター」の養成研修を始めました。