カナリアに聞く~浜田きよ子さん

――介護中の人だけでなく、今は介護をしていない人にも知ってほしいことはありますか?
ある日突然、家族が倒れて介護が必要になる場合もあります。知識がないと誰かに依存するしかないため、せっかくの福祉用具がうまく使えていないことが少なくありません。例えば介護ベッドは電動で高さが変えられるのに、低いままで使うと立ち上がるのは本人も大変だし、介護者も腰を痛めやすい。立つ時は高さを変えるなど、ちょっとしたことで動作が楽になります。日々の積み重ねなんです。介護技術を勉強するよりも、こんな道具があって、こんなふうに役に立つんだなと知っておいて欲しいと思います。

――浜田さんが日々の暮らしの中で喜びを感じるのはどんなことですか?
目先のことや自分だけのことではなく、いろんな人と一緒に何かを成し遂げたり、誰かと一緒に喜べた時が嬉しいですね。そうした共同性みたいなものって、喜びの質をより深める気がするんです。今、人間関係が希薄になって、責任が個人に課せられて、ものすごくしんどくなっています。介護って自分だけでは抱えきれないので、いろんな人が寄ってたかって関わっていければと願います。認知症を抱えた人が一人で外に出た時に近所の人がひと声かけてくれるだけで事故に遭わないとか、小さな子がうろうろして危ない時に近所のお年寄りがちょっと見てくれることが、とても大事です。
長谷川眞理子さんという文化人類学者が「ヒトにはおばあさんが存在する」と書いていました。ほとんどの生きものは種の保存のために次の世代を作ったら、自分はすぐ死んでしまいます。だけど閉経したメスであるおばあさんがいるのは、ヒトの大きな特徴なんです。ヒトは非常に未熟な形で産まれてきますから、赤ちゃんの面倒をみるとか、未熟な母親に教えるといった「おばあさん力」というのが、ヒトという種をより反映させるのに寄与してきました。今はおじいさんおばあさんの力を活かさないような時代になっている気がします。人生経験が長いということはそれだけ知識があることだし、大事な存在なので、高齢者の力をもっとうまく活用できるように、共同性の中に高齢者を含めて世代をこえたつながりをどう作るのか。介護はその共同性のきっかけにもなりうるだろうと思っています。

■浜田きよ子(はまだ・きよこ)
1950年京都生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。高齢生活研究所所長。排泄用具の情報館「むつき庵」代表。1995年高齢生活研究所を開設し、高齢者の生活改善や介護についての相談、高齢生活に役立つ道具の紹介等を行う。2003年排泄用具の情報館「むつき庵」を開設。排泄ケアのスペシャリスト「おむつフィッター」を養成し、資格認定制度を創設。


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