カナリアに聞く~浜田きよ子さん

――使うものやケアの仕方で、介護はどのように変わりますか?
どう変わるか知りたくて、94年から特別養護老人ホームで毎月勉強会を開いて、一人ずつ事例検討をしています。例えば出会った時は布おむつ3枚くらいを布おむつカバーの中に重ねて使い、おむつの当て過ぎで骨盤が後傾して座るのも大変な人がいました。アルツハイマー型認知症で、入浴を拒否するので全身に発赤ができて痒みもあるのに暴力行為が酷いためにおむつ交換が1日2回程度しか出来なかったんです。それを布パンツとパッド1枚に変えみました。尿量が多いと聞いていたので、少し大きめで立体ギャザーの高いパッドを使うと漏れなかったんです。すると暴力行為が一切なくなって、お風呂に入るのが大好きになり、入浴後のスキンケアも出来るようになってお尻まわりの環境が変わって行きました。以前は座るのも大変だったのが車椅子を押して歩けるようになり、最後は尿意が回復して大きなパッドがいらなくなりました。それだけでなく、言葉が増えて、以前は「おい」「コラ」「馬鹿」しか言わなかったのが、月が替わってもカレンダーがそのままだと「カレンダー、カレンダー」と言ったり。考えてみたら、お尻が不快だと、そこにばかり意識がいって穏やかな気持ちになれないのは当然ですよね。排泄ケアを変えると人格まで変わるんだ、尿意も回復するんだと驚きました。こうした事例がたくさんあります。

――間違ったおむつの使い方は思っている以上に影響があるのですね?
おむつを何枚も重ねた方が吸収が良いと思われるかも知れませんが、これは良くありません。股に大量のものが挟まるわけですから、座れない。母がおむつを当ててから起きなくなったのは気持ちの問題で、生きる意欲を失くしたのだと当時は思っていました。でも起きた姿勢だとお腹がきつかったこともあったようです。何枚もおむつを当てたらお腹を圧迫して起きられる状態ではなかったのだろうと思います。
おむつの一番大きな問題は姿勢を崩すこと。おむつって単に漏れなければ良いと思われていますが、使い方によってものすごく姿勢を悪くするんです。股が広がりますから骨盤が後傾し、もたれた姿勢だと食事も取りにくい。寝返りも打ちにくく、座りにくいので生活の状態が変わってしまいます。何枚も当てていると腰が反るから腰が痛くなる人もあります。姿勢はケアの基本で、姿勢がちゃんと整ったら食事も食べやすくなるし、眠りやすいし、動きやすく、お風呂も入りやすい。食べて出すわけですから、排泄は食べることにも関係し、トイレに行くという移動や衣服の着脱にも関係します。生活のすべてに関係するので、姿勢管理と排泄管理はとても重要です。


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