かわらじ先生の国際講座~取り残される日本

G20が閉幕しました。どんなご感想をお持ちですか?

とにかく丸く収めて共同首脳宣言を出しました。日本政府は「和」をテーマにしていましたので、思惑通りでしょう。これが政府のプロモーションビデオです。

しかし、そもそも20ヵ国・地域代表は、対立ではなく協調を世界にアピールすることを目的として大阪に集まったのですから(そうしないと世界の株価は下落し大変なことになります)、日本に言われるまでもなく参加者全員が承知していることです。「和」以外の、もっと新鮮なメッセージを出すことはできなかったのか。デジタル経済のルール作りに関して安倍首相は「大阪トラック」を標語に掲げましたが、この言葉もいつまで皆が覚えていることか。第一、大半の日本人が理解していないでしょう。この「トラック」は大型自動車の「truck」ではなく、陸上競技の走路をさす「track」で、つまり、「大阪発の政策の道筋」ということを言いたいのだと思いますが、漠然としていますね。気取っているだけで記憶に残りません。流行語大賞の候補にすらならないでしょう。

手厳しいですね。

一体に政治家や官僚の発想が時代遅れなのではないかと危ぶんでいます。G20の夕食会で安倍首相が大阪城にエレベーターを付けたことを「大きなミス」と発言したこともその一つ。


バリアフリーに対する認識の欠如があちこちで叩かれています。
サミット会場に「芸者コーナー」が設けられたことにも違和感をおぼえました。
 NHK NEWS WEB 
G20会場で関西の伝統文化紹介|NHK 関西のニュース
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20190628/2000017079.html
サミット会場では、茶道や文楽など関西の伝統文化を紹介するコーナーが設けられ、海外から集まった大勢のメディア関係者でにぎわっています。こ…

日本人自身が「フジヤマ、ゲイシャ」のステレオタイプから抜け出せないのです。お茶屋遊びにしてもセクシャルな要素がからんでいることは常識です。女性の人権問題が国際化しているなかで、一握りの人が高級料亭で行う遊びを得意げに世界にアピールするのはいかがなものか。
G20の期間中、二国間交渉も行われましたが、それについてはいかがですか?
日米首脳会談の冒頭、トランプ大統領は日本に軍事装備品の追加購入を求める発言を行いました。不躾で傲慢な話ですが、日本は軽くあしらわれている感じがしました。

トランプ氏は訪日前、日米安保条約への不満を再三述べましたが、安倍首相は会談でその真意を質すことはしませんでした。惜しいことです。今後、安保条約が両国間の議題の一つになるなら、そのなかで普天間飛行場の辺野古移設問題も米国との討議対象となり得るのに。そうすれば安保条約がどちらにとって不公平か明らかになるのですが。

プーチン大統領との会談についてはどう見ますか?

G20の直前、ロシアは二度、露骨な形で日本に対する姿勢を示しました。まず6月20日、ロシア爆撃機が二度にわたり日本の領空を侵犯しました。そして同月22日、プーチン氏はロシア国営テレビで、日本に領土を引き渡す計画がないことを自国民に明言しました。これらの行為には日本への配慮は微塵も感じられません。それどころか日本への対決姿勢があらわです。大阪で行われた首脳会談も、特筆すべきことはありませんでした。

中国との首脳会談はよい雰囲気でしたね。

来年、桜の咲く時期に習近平主席を国賓として招く方向でほぼ合意しました。中国にいろいろな問題があることはたしかですが、日中関係をもっと大事にすべきだというのがわたしの持論です。アメリカに振り回されず、どれだけ独自の対中政策を展開できるかが、わが国にとって一番の課題でしょう。

韓国の文在寅大統領とは会談せずに終わりましたね。

元徴用工問題に対する韓国側の判決が日韓関係を事実上、断絶させてしまいました。1965年の日韓請求権協定で問題はすべて解決済みとの日本の主張はそのとおりでしょうが、日本の態度はあまりに情がありませんね。徴用工だった人々の声や苦痛、その存在自体は決して解決済みではありません。この問題は将来、北朝鮮との国交正常化交渉のなかでも改めて提起されるでしょう。わたしは日本政府の弱者に対する冷たさをいろんな局面で痛感しています。この元徴用工問題もその一つです。

韓国といえば、G20後、トランプ大統領が韓国を訪問し、板門店で北朝鮮の金正恩委員長と対面しましたね。

はい。アメリカ、韓国、北朝鮮の首脳が揃って顔を合わせるのは史上初のことです。この話題のまえで、G20の印象も急に色あせてしまいました。日本が蚊帳の外に置かれたまま、歴史的な出来事が起こっています。なんだか日本が取り残されている。G20前後の一連の国際政治の流れを見ていると、そんな気がしてなりません。

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河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。


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