企業主導型保育所をめぐる利益相反

「子どもを持つ女性が働けるように」ということで様々な保育政策が動いています。子どもを預かってくれる保育所(というより保育所に類する場所)を増やそうという試みですが、当該の保育施設での子どもの安全が脅かされたままであったり、さらに危険な状況になったりするような点も少なくなく、多くの懸念が寄せられています。


さてこのような中、「無償化」とは少し違う文脈ではありますが、企業主導型保育所をめぐっての国会質疑で驚くような内容を耳にしましたので、思わず文字起こしをしました。少し長くなりますがお読みください。特に大事かと思われるところを色文字にしました。
なお「企業主導型保育所」とは、企業が会社内などに設置する保育所のことです。


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<3月22日 参議院予算委員会での、田村智子議員と内閣府の小野田(小名田?)統括官とのやりとり>

田村議員:(企業主導型保育所は)コンサルタント会社が間に入ることで、保育と無関係の事業者も簡単に参入できるようになっているのですね。私もインターネットで、「企業主導型」「コンサルタント」と検索してみました。そうすると、「企業主導型保育所を作りませんか。施設の設備、整備、助成金申請、運営コンサルもおまかせください」と。こういう広告が次々と出てきますよ。
助成決定の審査の仕組みについてもお聞きします。審査の体制と方法について説明してください。
小野田統括官:審査体制でございますけれども、平成31年3月1日現在、企業主導型保育事業の審査に携わる人数、人員は52名となってございます。
田村:増やしたってことですね。私たちが2月21日に内閣委員会で視察に行って受け取ったのが資料の4なんですね。それをみますと、企業主導型の保育事業を担当するのは17人。これね、(審査を担当する)児童育成協会は私、児童館事業など児童福祉の大切な取り組みしてきた団体だというふうに思っています。だけど保育事業の実績はないんですよ。でこの17人の体制で長くね、今年度の決定予定を含めると4,139施設、こういうのに対応している。だから増やしたんでしょう。緊急に増やしたんでしょう。
認可保育所では最低基準をクリアしているかどうか、自治体が直接チェックをします。設置責任者との事前面談も行うのが通常です。ところが企業主導型は、ネット申請で書面審査です。保育士配置は5割で良いなど、基準もゆるい。あの、先ほど指摘したコンサル会社の1つがパソナフォスターなんですね。コンサルタントだけでなく、事業受託もしていて、ホームページでは12ヵ所の企業主導型保育所を運営とあります。ところで企業主導型保育所への立ち入り監査をどのように行っていますか。
小野田統括官:お答えいたします。企業主導型保育事業の実務を担う児童育成協会が原則年1回以上の立ち入り調査等を行っているところでございます。
田村議員:できないでしょ、こんな人数で。北海道から沖縄まで。実際はどうしているんですか。
小野田統括官:児童育成協会の行う指導監査につきましては、株式会社パソナへ委託しながら、実施していると承知してございます。またパソナフォスタがーが運営している企業主導型保育施設につきましては、公平性の観点から必ず児童育成協会が監査に入ることにしています。
田村議員:そういう問題じゃないですよね。企業主導型保育事業をビジネスにしているパソナフォスターは、パソナの連結子会社なんですよ。これはね、利益相反の恐れがあります。もう、パソナ1社だけが受託しているんですよね。そもそも企業主導型と言うのは、立ち入り監査を企業に丸投げしちゃうと。審査もね、私、本当は、内閣府が審査に責任を持つって言ったのに、児童育成協会に丸投げでしょ。本当にひどいやり方だと思いますよ。
で、しかも、その立ち入り監査を丸投げした企業の子会社が、企業主導型保育に参入もできると。監督もユルユルの仕組みではないのかと、いうことなんですね。
保育の規制緩和の旗を振ってきた代表的な人物が、パソナ会長の竹中平蔵氏ですよ。自治体のチェックはない。基準もゆるい。それでも公費は認可(保育所)並みに入る。この企業主導型の制度が出来た途端に、まさにビジネスチャンスとばかりに、旗振りの張本人の企業が監督を一手に引き受け、監査を一手に引き受け、そして子会社が積極的に参入をする。これがまともな保育行政と言えるのか
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なお、元の音声はこちらからお聞きいただけます。

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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。