カナリアに聞く~中村伸一さん

山間の村で家逝きを看取る「寄りそ医」となって。
医者になってわずか3年目に、福井県の山間にある小さな診療所に赴任した中村伸一さん。「人生の最期を家で迎えたい」という患者や家族との触れ合いを通して、地域医療の現実に苦悩しながらも、ひた走った日々。その姿は、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも紹介され、「神の手」系医師とはまた違う、望まれる医療の担い手「総合医」として話題となりました。

日本の原風景が残る村と人に魅せられて。
人生百年といわれるようになった今の時代。テレビなどで注目されるのが、最先端の機器や設備を自在に操り、特化した専門分野で人を死の淵から救い出す、「神の手」を持つといわれる医者たちです。
一方、私はそれとは対極的なところ、名田庄村(現在、おおい町名田庄地区)という過疎化が進んだ福井県の小さな集落で内科、外科、整形外科、小児科、皮膚科まで一人で担当する総合医です。
決して華やかとは言い難い私の日常が、2009年に『プロフェッショナル 仕事の流儀(NHK)』で取り上げられました。さらに2012年には、小池徹平さん主演によるドラマ『ドロクター(NHK-BSプレミアム)』が放送されましたが、そのモデルも私。地域医療について、視聴者に少しでも関心を持っていただけたとしたら嬉しいことです。
私は福井県三国町(現在の坂井市)の出身。自治医大で地域医療を専攻し、28歳の時に名田庄診療所に赴任しました。人口およそ3000人、高齢化率30パーセントというへき地医療で、医者は私一人。本音を言えば都会の病院に戻って外科の専門医として腕を磨きたいという思いもありました。それでも何事もお互い様という住民たちの鷹揚な人柄に魅かれ、また「家で死にたい」という患者の切実な思いに触れるうちに、自分の意志で名田庄にとどまることを決意。以来、25年余りをこの地で過ごしています。
赴任した当時は、どんな患者も診なければならないというプレッシャーで毎日が不安でいっぱいでした。でも今から思うと、そんな頼りなさそうな医者に診察される患者はもっと不安じゃなかったかと思うんです。みなさんよくお付き合いしてくださいました。
私は患者のほとんどが顔なじみという人間関係の中で医者として、地域に支えられ、地域に育てられてきました。


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