カナリアに聞く~中村伸一さん

「病」ではなく「人」を診る。患者に寄り添うことが私の役割。

健康や地域医療に関する講演も積極的に行っている

福井県は全国的にも家族のつながりが強く、中でも名田庄は三世代同居率が高い。家で死にたいと望む高齢者が多く、家族もそれを支えたいと思っています。私も患者とは、人と人としてつながり、その人らしい人生を送ってもらいたい。「ええ人生やった」その一言のために私があるのです。
そこで最初に考えたのが、患者や地域住民を支える施設と組織を作ることでした。1999年にオープンした『あっとほ~む いきいき館』は診療所のほかに、役場の保健福祉部門、社会福祉協議会、高齢者の保健福祉支援センターなどを備えた総合施設。スタッフや住民が話し合い、みんなが安心して暮らせる地域にするために作りあげたものです。
赴任当時の名田庄は、保健、医療、福祉、すなわち予防、医療、介護の施設が貧弱なうえ、連携もほとんどない状態でした。たとえば、寝たきりのお年寄りをお風呂に入れてあげるシステムがない。そこで役場の担当者や医療スタッフ、社会協議会のみんなが話し合ってデイサービスを始めた。また在宅ケア講座も始め、地域全体で高齢者を支えようという講演をあちこちでやりました。そしたらそのうちに参加者から「私たちにも何かやらせてよ」と言う声があがり、ボランティアグループが結成され、デイサービスを手伝もらうことになった。元気なうちはお世話して、へたってきたらお世話になる。そんな助け合い、支え合いが始まったのは、介護保険制度が始まる前の話です。
患者や家族が何を望んでいるかを知る。すなわち「病」ではなく「人」と向き合うのが地域医療。組織作りと共に、訪問診療に力を注ぎ、患者だけでなくその家族ぐるみの付き合いをしています。末期の癌だからと安静にするのではなく、痛み止めを使用しながら、好きな趣味を続けられるようにするのもそのひとつ。一人ひとりの状況や考えに沿い、その人の人生を悔いなくまっとうしてもらうための「寄り添い」と「看取り」、それが私の役割だと思っています。