高等教育の漸進的無償化を求める動き

11月半ばに麻生太郎大臣が、国立大学出身の首長を「人の税金を使って大学に行った」と非難したというニュースがありました。


人々が初等教育から高等教育までの教育を受ける権利を保障するのは国の責務であり、諸外国では常識なのですが、何か勘違いをしておられるような気がします。

教育制度は、初等教育(主に小学校)、中等教育(主に中学と高校)、高等教育(高校卒業後の教育、大学・短大など)に分けることができます。日本ではこのうち、初等教育と前期中等教育が義務教育で無償です。後期中等教育である高校については、民主党政権時代に授業料の無償化が実現しました。政権交代後は状況が変わりましたが、過去に比べると負担軽減された状態にはなっています。
他方の高等教育は、学生や保護者による授業料等の負担の高騰が続いています。高等教育と後期中等教育の漸進的無償化は国際人権規約に定められています。日本は長年、この条項を留保して従わないできましたが、2012年に留保を撤回しました。つまり、高等教育を徐々に無償にしていくことは、国際条約上の日本国の義務になっているのです(なおそれ故に、大学教育を無償化するための憲法改正は不要です。国内法は国際条約に従って作られないといけないからです)。

しかし実際には、民主党政権時代に国際社会と行われた政府の約束なんて無視ということなのか、学費負担は重くなる一方で、奨学金という名前の教育ローンに苦しむ人も少なくありません。そのような中、学生や弁護士、大学人などが声を上げています。

高等教育の漸進的無償化に関する研究を続けてきた研究者たちが、現状は人権侵害状態にあるとして救済の申し立てを行いました。

「生きやすい京都を作る全世代行動」の皆さんも内閣府に要請を行いました。

就活が学業を妨害している実態についても、学生のリアルな声を伝えました。

また、このような団体も発足したようです。
学生の生の声をということで、学生を対象としたアンケートを行っています(一応11月中を目途にしていたようですが、12月1日現在ではアンケートフォームはまだ動いている様子でした)


LDA-KYOTOの皆さんも、市民の実態をデータで政治に届けるために、アンケートをやっておられますね。
なお、奨学金問題に苦しむ方々の相談活動などもあります。身近で悩んでいる方がおられましたら、こういう情報を伝えて差し上げてください(12/9は保証人問題のようですが、他の相談活動もあります。ひとりで悩まず相談を)。


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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。