「カナリア俳壇」6

11月10日~27日までの投稿作品を掲載します。コメントや添削例を付けますので、ご参考にしてください。

△amazonで選る新刊や夜半の秋     剛司

【句評】句の形は完璧です。ただ、amazonで新刊を買うことは日常的なことで、そこに詩的な高揚は感じられません。もう一つ、日常感覚と異なる要素がほしいところです。たとえば「amazonに祖母の遺句集秋の宵」など。

〇 杯を溢るる程に新走り     剛司

【句評】新走が美味しそうですね。このままでも十分ですが、もうちょっと勢いをつけるとすれば「杯をあふれんほどに新走」。「新走」は送り仮名が要りません。

△~〇 歪みある昭和の硝子寺小春    マユミ

【句評】このガラスがお寺のものなら、最後に種明かしをするのでなく、早めに出したほうが読者に親切でしょう。また、歪みのあるガラスは一時代前のものであることは自明ですから、あえて「昭和の」と言う必要もありません。「歪みある寺の硝子や菊日和」など、もう一工夫できそうですね。

◎ 眼裏に母の笑顔や十三夜     マユミ

【句評】これはけっこうな句です。句意も鮮明ですし、作者の気持ちも伝わってきます。季語もいい感じです。

△~〇 終活てふ言葉は知らず照紅葉     える

【句評】紅葉のように、散る間際まで美しく輝いていたい。そんな作者の気持ちが窺われる句です。「終活」という言葉を使うと、どうしても理屈っぽくなるのは否めません。この心境を純粋に自然に託して詠めたら、さらにすばらしい句になるでしょう。

〇 桜葉の散りて紅まさりけり     える

【句評】枝についている紅葉よりも、落葉になった時のほうがさらに赤みが増すのですね。ユニークな発見です。「桜葉」がやや窮屈です(ちょっと苗字みたいですし)。「桜の葉散りて紅深まれり」「桜の葉散りていよいよ紅(べに)深む」などと考えてみました。

〇 突風にみな立ち上がる落葉かな     徒歩

【句評】句意も解りやすく、きちんとできている句です。ただ、「みな」と「落葉」の間が離れているため、「みな」と読んだとき、一瞬、何のことだろうと考えてしまいます。「一斉に落葉立ちたり風の中」。あるいは落葉をもっと具体的にし、「突風にがばと起きたり朴落葉」などとするのも手でしょう。

〇 神の旅雲垂れさがる地平線     徒歩

【句評】徒歩さんらしい独特の世界観をもつ作品です。このようなユニークな句をみると、わたしも技癢を感じ、「神送る水平線に雲集ひ」と作りたくなりました。

△ 旧字体松山驛は鰯雲     妙好

【句評】やや語順が変ですので、より分かりやすく書くなら「いわし雲松山驛は旧字体」でしょうか。この句は視点が鰯雲と駅舎の文字の2つに分裂しているので、焦点は駅名の文字に合わせ、「秋うらら松山驛の文字見上げ」くらいでいかがでしょう。

△ 芋茎買ふ思ひ出も買ふ道の駅     妙好

【句評】「思ひ出も買ふ」というところを工夫されたのですね。しかし、このような気の利いた表現はどうしても作為が目立ってしまい、読者の気持ちは引いてしまいます。「道の駅母の土産に芋茎買ふ」など、もっと素直に描写してみましょう。

△~〇 薄闇に潜るCT肌寒し     音羽

【句評】「CT」自体はコンピューターによる撮影のことですので、やはりCT検査と正確に言いたいところです。中七が字余りになりますが「肌寒くCT検査の薄闇に」としてみました。

△~〇 冬薔薇の棘に戸惑ひ切りにけり    音羽 

【句評】「戸惑ひ」というところで読者も戸惑ってしまいます。「冬薔薇の棘もてあまし切りあぐね」ということでしょうか。

△~〇 着膨れて起き抜けに聞く鳶の笛    もち子

【句評】言わんとすることは分かりますが、「着膨れて起き・・・」と読めてしまうため、語順を入れ替え、「起き抜けに着膨れて聞く鳶の笛」のほうがいいでしょう。ただ、あまり詩情が伝わってきませんでした。着ぶくれて聞くことに何か特別の思いがあるのでしょうか。

△ 猫好きの島に集ひて冬ぬくし    もち子

【句評】すみません、「猫好きの島」がわかりません。猫好きの人が集まる特別の島があるのでしょうか。とすれば、メルヘンチックで楽しそうですね。

次回は12月18日(火)に掲載予定です。17日までにご投句頂けたら幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。アドレスはefude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。