高齢期の暮らしと住まい(38)

「孤独死のリアル」結城康博著、講談社現代新書

独居高齢者増と生涯未婚率上昇

以前にも何度か話題にしていることですが、独居高齢者は今後も増加していきます。独居の理由は、配偶者との死(離)別、子はいるけど同居しない、生涯未婚で子無など、さまざまなパターンがありますが、将来的に比率が高まるのは、生涯未婚者かつ子無高齢者、すなわち家族がいない人です。著者自身です(苦笑)。周りの友人・知人にも同条件の人が多いので、単純に考えて明らかに、20~25年後の天涯孤独高齢者増が目に見えます。これまでは、介護や生活支援リスクを問題にすることが多かったのですが、最近「孤独死」の本を読み、もっと真剣に「死後」のことも考えておかないといけない、と痛感しました。

 

「平成29年版高齢社会白書」より:東京23区の調査では独居高齢者の自宅死が増加している

自分の後始末は自分でできない

今でも頑固な高齢者は「ほっといてほしい」と頑なに近隣との関係を断ちたがる人もいます。しかし、このような人は「孤独死」に陥るリスクが非常に高い。「どうなっても自分のことは自分でする、責任を持つ」といっても、どうやっても死後のことは自分ではなんともできません。「孤独死」の定義は定かでなく、厚労省などは「死後一定の期間発見されない」、全国に賃貸住宅を持つUR都市機構は「死後1週間経過後発見される」など、さまざまです。孤独死は、女性より男性のほうがずっと多く、しかも50代の男性も少なくありません。上記の本によると、季節にもよりますが、発見遅れの場合の人体の損傷はかなりのもので、発見者のショックも非常に大きく、その後の発見者の生活にも大きく影響を与えてしまいます。

 

「平成29年版高齢社会白書」より:独居高齢者は孤独死を「身近な問題」と4割以上が感じている

お世話をして、お世話になろう

都市部、そして集合住宅に住んでいるとどうしても人間関係が希薄になりがちですが、何かのときのお世話はお互いさまです。独居高齢者には地域の民生委員さんや、自治体独自の安否確認サービスなどがあります。「拒否」するのではなく、まずはそのような立場の人と、少しずつでも人間関係を築いていくことが大切です。新聞配達や定期的な飲料配達など一般企業も、自治体と連携して独居高齢者を見守り、異変があると福祉職員や警察と連携して早期確認するところもあります。それで命が助かることも。見守られる人同士が見守ることもあるそうです。何らかの形で繋がっていると、早く異変に気付けます。自分一人ではどうしようもないことがある、ということを忘れてはいけませんね。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。

 


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