「全国学力テスト」結果への反応(2)

先々週に、全国学力テスト結果への反応(1)として、大阪市の吉村市長が学力テスト結果を教員の評価や給与、および学校予算に反映させるという方針を打ち出したことを取り上げました。この方針の発表直後にはtwitter上で異論が飛び交いましたが、少し時間が経ち、まとまった論考も出されています。今日はそれを紹介します。

教育評論家の親野さんの記事は大変わかりやすいです。


日本は1960年代にも全国学力テストを行っていたことがありました。そのときに、今回の市長方針と同じようなことが行われ、その結果として実際にどのような酷いことがあったのかを具体的に解説しています。またイギリスの事例も紹介されています。

教育政策・教育経済学の研究をしている畠山勝太さんによる批判です。過去の歴史にも学ばず、現在の日本と世界の情勢などにもそぐわない愚策であると批判しています。
個人的に大変共感したのは、「優れた教育の成果をあげるには教師の職能形成が重要であるが、そのカギを握るのは教師同士の連携である」というところです。吉村市長が打ち出した方針では、教師の間に椅子取りゲーム的な競争を促してしまい、教師同士の連携や連帯は阻害されると思います。

教育評論家で中央教育審議会の委員も務めている妹尾さんの記事です。
全国学力テストの順位の背景にある数値のからくりにも触れつつ、吉村市長は「教師のやる気を高める」ために上記の方針を打ち出したつもりだけれど、実際は逆効果にしかならないのではないかという趣旨のことを述べています。そしてテストの「順位」ではなく、結果(大阪市の子どもたちはどの問題が苦手であるのかなど)をきちんと分析して、何をすべきかを冷静に考えるべきと主張しています。つまり、学力テストの本来の目的に立ち返りなさいということですね。

市長の方針の撤回を求めた署名も集められています。8月17日時点で1万5300筆が集まっているそうです。

夜回り先生」こと水谷修先生も抗議しています。

なお、8月2日に吉村市長が方針を発表した記者会見の全文はこちらから読めます。

 大阪市 
平成30年8月2日 大阪市長会見全文
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000431751.html
司会それでは、市長会見を開始します。市長、よろしくお願いします。 熱中症への注意喚起について 市長はい。まずは熱中症ですけれども、熱中症にご注意くださいという注意喚起です。連日、猛暑が続いています。特に熱中症による救急搬送というのが急増し..

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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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