かわらじ先生の国際講座~米朝首脳会談の評価

注目の米朝首脳会談について、京都産業大学教授の河原地英武が解説します。

首脳会談をどう見ましたか?

共同声明が調印されましたが、その内容を単純化して言えば、北朝鮮は朝鮮半島の非核化を、アメリカは金正恩政権の体制保証を、それぞれ約束したものでした。あくまでも約束であって、それ以上には踏み込んでいません。具体性にはとぼしいですね。

どのような成果があったのでしょう?

私は北朝鮮側の外交的勝利という感を抱きました。そもそも北朝鮮が近年、核やミサイルの開発に力を入れてきたのも、アメリカを交渉の場に引っ張り出すためでした。結果的にはそれが奏功したと言えるわけです。もし北朝鮮が核やミサイルの脅威をちらつかせなければ、アメリカは北朝鮮など相手にしなかったでしょう。それほどアメリカと北朝鮮の国力の差は歴然としています。

米朝関係は今後接近していくのでしょうか?

進展はするでしょう。しかし友好国になるというわけではありません。北朝鮮の理念は「自主独立」です。小国であるがゆえに、大国のなすがままにはなりたくない、との意識がとりわけ強いのです。冷戦時代は中ソ対立を利用し、中国とソ連を張り合わせながら、北朝鮮は自らのバランスをとってきました。冷戦後は、中国への依存度を高めていましたが、中国の言いなりにはなりたくない。とすれば、中国と張り合わせるためにアメリカを引っ張り込むしかありません。

では、金正恩の求める「体制保証」とは、アメリカに潰されないという意味合いだけではないのですか?

はい。金正恩は中国の傀儡にもなりたくないのです。アメリカの圧力に対しては中国を味方につけ、他方、中国の圧力に対してはアメリカを味方につける。そうやって自らの体制維持を図ろうというのが金正恩の腹なのでしょう。

金正恩の思惑はそれだけですか?

いえ。もう一つは経済です。経済のグローバル化が進む中で、北朝鮮も孤立しているわけにはいかなくなりました。国民とて軍事のために経済を犠牲にする政策には納得していません。北朝鮮も国家目標を軍事から経済発展へと大きくシフトせざるを得ないのが現状です。対米関係の修復も、経済的実利の追求という点で必要なことだったのでしょう。

※かわらじ先生の国際講座、前回はこちら


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