コンビニエンスストアのファミリーマートが「子ども食堂」を全国展開すると発表し、議論が起こっています。イートインスペースを利用して、子ども100円、中学生以上400円で食事を提供し、40分程度のイベントやレジ打ち体験などができるというもののようです。
貧困問題に取り組んできた方々からは批判的な意見が多い印象です。例えば関東を中心に活動している藤田孝典さん。「内容が子ども食堂と言えるものではない」「現在も過酷な労働を店員に強いておきながらさらに業務を追加するのはダメだ」「国家責任を後退させる危険がある」というのが主な理由です。
ファミマ子ども食堂への3つの懸念と意見(藤田孝典) https://t.co/YbLVzaXpCd 賛否両論たくさんの意見をいただくけど、ファミマ子ども食堂を「社会貢献事業」か「企業活動の一環」と見るか、だけでもかなりの違いがある。僕は貧困対策でも社会貢献事業でもないのでは?と疑問を呈している。
— 藤田孝典 (@fujitatakanori) February 5, 2019
大阪で活動している田中さんも同意しています。
コミュニティ外、低賃金、過度な民営化の三本柱で藤田氏は批判し、僕も同意する。「公」ジャンルを民間が行なう新自由主義の究極でもある。大手学習塾が学習支援に乗り出すのも同構造だ。https://t.co/Gr1YbLA0KL
— 田中俊英 (@tanakatosihide) February 5, 2019
「それでも困っている子どもが助からるんだから良い」かもしれないけれども、やはり…という記事も。
【昨日の人気記事3位】
ファミマが子ども食堂をやることにどうも「もにょる」のはなぜか (紙屋高雪)https://t.co/b7XzWwTUlN [ライフ] #blogos— BLOGOS編集部 (@ld_blogos) February 3, 2019
ちなみに「もにょる」とは「言葉にしにくいがどうも歯痒い感覚」だそうです。
子どもの6人に1人が貧困状態にあると言われている今、十分な栄養をとることのできない子どもたちがいることも広く指摘されるようになりました。そのような状況を「なんとかしたい!」と「子ども食堂」を始めた人た人々が全国にいます。ただしその実態は非常に多様でもあり、議論を整理するためには「子ども食堂」とは何かを明らかにしておく必要があるように思います。
「こども食堂」の混乱、誤解、戸惑いを整理し、今後の展望を開く(湯浅誠) – Y!ニュース https://t.co/34mE5jGQSH
— 信州うえだ おけまる食堂 (@okemarukari) July 28, 2018
他方で、今回のファミリーマートの発表は食品ロス対策などの観点から概ね良いことだとする意見もあります。こちらの番組の中でこの話題が出てきます。
【音声配信】「#恵方巻 の廃棄から考える #食品ロス 削減 と #貧困対策」大西連×小林富雄×松本靖子×荻上チキ▼2019年2月5日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)https://t.co/aFJru5zyMs #ss954 #tbsradio #ラジオクラウド #SDGs #国連
— 荻上チキ・Session-22 (@Session_22) February 5, 2019
発言している大西連さんは、ご自身のtwitterでも発言をしておられますね。上記の藤田さん達の批判には共感を示しつつ、ファミリーマートとしてはできることをしようとしているのだろうと。
いずれにせよ忘れてはならないのは、「子どもの貧困対策=子ども食堂」では断じてないということです。低賃金労働によるワーキングプア、長すぎる労働時間、高すぎる教育費負担などの問題を政治が解決していくことでしか子どもの貧困は解消しません。2年前になりますが、安倍首相が自身の職務を放棄するかのようなメッセージを出して批判されたこともありました。この姿勢は基本的には変わっていないようにも思います。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。