高齢期の生活と気候
本稿をご覧になる方は、京都中心に関西在住の方が多いかと思います。関西に住んでいると(日本海側以外)、あまり「雪害」の実感がわかないかもしれません。たまに少し雪が積もると大騒ぎになりますが(;’∀’)。先週、仕事で東北に行ったのですが、「冬場の生活がもううんざりなので、南の方に移住したい」と、おそらく80代前半と思しき方から相談を受けました。だいぶ以前にも、東北の仕事先の方から「高齢者は住み慣れた土地を離れてでも、雪のないところに住み替えたい人が多い」という話を聞きました。比較的温暖な地に住んでいる人間からは、想像を絶する命にもかかわる「生活困難」があるのです。
移住の前には「お試し」を
高齢期の住み替えは、県外など極端に離れた土地に引っ越すのは、個人的にはあまり賛成しません。憧れの地域を希望する人や、「子供の近くへ」という人も多いです。しかし、高齢期は徐々に心身が弱っていきます。順応性も落ちています。そんな状況で、まったく新しい環境で、知人もなく、言葉遣いや生活習慣、食べ物も異なる地に馴染むのはかなり大変です。同じ日本でも「こんなに違うのか!」が実情です。子の近くへ、と引っ越した高齢者が、結果的に寂しくなり引きこもり、認知症につながるということもよく聞きます。いくら我が子とはいえ、ずっと一緒にいるわけでもなく、話題も異なります。そのようなリスクを十分踏まえた上で、それでも移住希望の場合は、まずは数ヶ月のお試し暮らしをしてからのほうがよいでしょう。
その人の「性格」が多いに影響
一方で、飛行機の距離でしか移動できない遠方の田舎から、一人娘の住む首都圏の高齢者住宅に住み替えた80代の方から、以前お話を伺いました。現役時代は教師をしていたそうで、ともかく好奇心が旺盛で「せっかく首都圏に住み替えたので、新宿も銀座も遊びに行く」と毎日出かけ、さらに高齢者住宅内のイベントの企画などにも励み、「田舎の一軒家の大変な管理を思うと、本当に住み替えて良かった」と言われていました。単純に「性格」にもよるかな(苦笑)と思ったりもしますが、やはり人間なかなか「今までの習慣」を脱するのは困難です。高齢期の住み替えは、あらゆる角度からの確認が大切ですね。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。