単身高齢者の生活に男女差
先日、国立社会保障・人口問題研究所から「生活と支え合いに関する調査(2017)」が公表されました。新聞にも一部掲載されたのでご覧になった方もいるでしょうか。各世代の生活状況についての90頁の報告書です。いろいろな項目がありますが、個人的に注目はやはり独居高齢者の暮らし状況です。男女差が明確に出ている部分も多く、高齢期は男性のほうが女性よりさまざまな問題を抱える傾向であることがわかります。単独高齢世帯で、「会話頻度が2週間に1回以下」は、男性15.0%、女性は5.2%と約3倍差。「日ごろのちょっとした手助けで頼れる人がいない」は、男性30.3%、女性9.1%でやはり3倍強の開きがあります。さらに「介護や看病で頼れる人がいない」は男性58.2%、女性44.9%と、この項目は大きく開きはないものの、男性の高さに注目です。
普遍的な社会保障制度
年代を問わず、自分の力ではどうしようもない生活上の問題が起こった時に重要な制度が「社会保障」です。これに関し、「所得、資産や保険料の額に限らず誰でも必要に応じて利用できるべきか」という質問には、「そう思う」と「ややそう思う」を合わせて約85%の人が必要性を答えています。この質問の仕方がちょっとどうかな(苦笑)と思ったりもするのですが、逆に「思わない」の方々はどのように考えているのか聞いてみたいところです。『負担に応じた見返り』を主張する人もいるかもしれませんね。難しい問題ですが、公的な社会保障や福祉は、広く公平に助け合えることが大切と感じています。
見守り機器の課題
話はがらりと変わりますが、先日専門紙でユニークな商品を見つけました。上記の通り、独居高齢者は家族同居の高齢者よりあらゆる生活の場でリスクが高まります。これまでも自宅内に設置するセンサーや電気ポット、エアコンなどの見守り機器もありましたが、単三電池型の見守り機器の中に単4電池を入れて、普通の電池として使えるタイプが開発されました。毎日利用しているテレビのリモコンやガスコンロの点火装置などで利用し、離れた人が利用状況を確認できる仕組みとか。一方で、課題は確認してくれる「離れた家族」がいない高齢者の場合です。いずれAIなどが集中管理する時代もやってくるのでしょうか。見守り機器もどんどん変化していきますね。
———————————————————————
山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。