高齢期の暮らしと住まい(36)

 

公益財団法人 介護労働安定センターより

介護職不足はさらに深刻

8月3日に、平成29年度「介護労働実態調査」が発表され、介護人材の不足感は4年連続増加となりました。この調査は、介護事業所(17,638ヶ所)に対し調査したものです。これによると、「大いに不足」「不足」「やや不足」を足した「不足感」は66.6%で、昨年対比4ポイント上昇しました。なかでも、「訪問介護職員」の不足感は82.4%と圧倒的な高さです。国は「在宅介護」にシフトする政策をあげていますが、そもそも在宅介護の基本となる訪問介護サービスが適切に提供されないと、根本的に方向性が崩れてしまいます。「親の介護を理由に退職しないですむように」という介護離職ゼロの方針にも全く反する現象がおきているといえます。

 

一筋縄では解決しない

不足している理由は「採用が困難である」が88.5%と、前年対比15.4ポイントも急上昇しています。全産業的に人手不足の中、あえて厳しい介護業界に仕事を求める人が少なくなったのもあるでしょう。また、一般的に「給与が安い」ということも言われますが、調査では「介護の仕事を辞めた理由」の第1位は「職場の人間関係に問題があった」です。低収入や事業所への不満などもありますが、人に接する仕事ゆえに、意見の相違などが多いのかもしれません。給与に関しては、勤続10年以上の介護従事者対象に月8万円の給与増額も検討されています。問題は、給与増の財源が、保険料なのか税金なのか、結果的に多くの人の負担にも関わってくることです。

 

公益財団法人 介護労働安定センターより

介護職員の介護離職

この調査で気になったことのひとつに、介護職員も自身の「介護」の悩みを持つ人が多いということ。過去3年間で介護を理由に退職した人がいた事業所は25.4%でやはり前年より1ポイント増えています。本当の理由を述べずに退職した人もいるでしょうから、実態はもっと介護離職が多いかもしれません。

国は、外国人介護職の大量導入なども検討していますが、話はそう簡単に解決するとは思えません。日本語のできる・できないだけでなく、文化の違いや介護のスキルは当然ながら、受入側の誠意ある対応(差別や低賃金労働などの除去)も徹底しないと、介護業界だけの問題でなく、日本全体の問題につながります。この件はまた別の機会に述べたいと思いますが、在宅介護の厳しさは、ますます高まると思います。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。

 


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