ときどき寒い日もあるものの、段々と春らしくなってきました。卒業式の知らせや、合格発表の知らせが届き、4月からの新しい生活スタートが始まっていることを感じます。
一方で、1月1日に起こった能登半島地震については、日々のニュースで状況を知るとともに、私の身近にも福祉専門職や、災害支援の研究者らが現地に入り、その情報がもたらされています。
日本の高齢化率は令和5年9月現在で29.1%ですが、能登半島の特に先端の方の各市町ではこの値を大きく超え50%前後になっていて、2人に1人が65歳以上ということです。能登半島のこの約50%という数値は、日本全国の高齢化率の推移が今後上昇する見込みですが、それでも2070年に38.7%になるという予想なので、ずいぶんと大きい数字だと言えます。
高齢化率が50%になる未来は、多くの市町では遠い未来か、そのようになることは考えにくいのかもしれませんが、一方で人口減少が進んでいる地域では、今すでに起こっている現在の話です。
2024年春は、介護・医療・障害福祉サービスの報酬改定が行われるタイミングであるため、各福祉サービスの利用料やサービスの在り方に注目です。その変化の背景や懸念点には、福祉専門職の不足と確保、また財源の確保に課題はあるのですが、私の現場感覚でも近頃は「ケアマネさんが不足している」「利用したい時間帯にヘルパーさんが確保できない」などの話を聞くことが増えました。少子高齢化が進んだことで、サービスの利用と提供のバランスが不均衡になっていることを感じます。
さらに、そこに自然災害等が発生すると、生活環境は短時間に激変し、場合によると避難によって地域での福祉サービスの必要と提供すべき量が変化します。今現在の能登半島では、入所施設の被災や、利用者の自宅と訪問サービスの被災により、施設ごとまたは個人ごとの避難がなされています。課題は、被災した地域での生活が再開できるようになった時に、建物や水道やガスなどのインフラは復旧していたとしても、マンパワーが必要な福祉サービスがどこまで利用者の帰郷を待った状態で復旧しているのかということでしょう。
「住み慣れた町でいつまでも」というようなキャッチフレーズは、認知症啓発のときにも、成年後見制度の普及啓発でもよく使われます。しかし、それを困難にするのは、ときに自然災害であるということが、今回の震災で強く感じます。
命を守ることは第一に大切なことです。そのために、高齢者も、障がいがある人も、子どもも、大人も、誰もが取り残されないようにできる限りの準備は必要です。そして、何かあったときに臨機応変に助け合えるのは、人同士です。
日ごろは介護保険や障害福祉サービスが支援の大部分を占めることが多いのですが、私たちの生活上にはさまざまな局面がありますから、高齢化や、経済的な不安定さ、そして発災時も含めた暮らしの各場面で暮らし続けられるように、いくらかでも気持ちと物理的な準備を進めておきたいものです。
新しい年度が始まります。準備を進めていきましょう。