不可解な報道ー奈良教育大学付属小学校をめぐって

奈良教育大学付属小学校が「不適切」な教育を行っていたと断定するニュースが、NHKや民放のテレビ等で報道されました。ご覧になった読者の方もおられるかと思います。学習指導要領に従わない「不適切」な教育があったとするもので、校長と奈良教育大学学長が謝罪したりしています。さらには文部科学大臣まで出てきて、全国の国立大学付属学校をチェックすると言い始めました。
それにしても、なんとも不可解な報道でした。
「不適切」な教育と言ってもその内容は、学習指導要領の詳細部分に沿っていないという程度のことで、そんなものを通常は「不適切」とは言いませんし、各局のTVのニュースになるほどのことではありません。
そもそも学習指導要領とは、あくまでガイドライン的なものであり、すべての学校がその詳細まで従うというものではありません。その法的拘束力の程度についての見解は研究者によっても異なりますが、厳しめの順守を求める立場であっても「1ミリもずれてはいけない」という態度をとることはありません。これらのことについて指摘しているポスト(ツイート)や記事を紹介しておきます。


本当に不可解この上ない状況で、各局のTVで「不適切」と連呼された奈良教育大学付属小学校の先生方や子どもたちがどんな気持ちだっただろうと思うと胸が痛みます。そしてネット上にみられる「ルールを守れ!」という大合唱的な反応には、恐怖心さえ覚えます。
そもそも現在の学習指導要領に則した授業時数は、子どもたちに負担が重すぎることなど、現場からの評判は最低だそうです。


おそらくどこの学校でも先生方が、子どもたちの健康や楽しく過ごせる学校生活に配慮して、いろんな工夫をしているはずです。
なお、奈良教育大学付属小学校のこれまでの教育実践は、クリエイツかもがわから出版もされています。


こんな素敵な実践もあったのですね。


さて、なぜこのような不可解な報道があったのかについては、様々な憶測が飛んではいるものの、はっきりとしたことはわかりません。昨年に着任したばかりだという校長が、記者会見等で教員団を批判していることから、校長と小学校の教員団との間に不和があったようではあります。


いずれにせよ、学校という場所は、日々子どもたちと接している先生方が知恵を出し合って運営しないと、子どもたちの学びと育ちを支えることはできません。校長が一方的に何かを決めるようなことは適切ではありません。しかも学習指導要領は、国という単位で決まっているものです。そこから少しでもズレてはいけない、ルールを守れ、という姿勢では、子どもたちも先生たちも追い込まれてしまいます。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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