介護保険制度と防災、発災時の生活支援について

介護保険制度が始まったのは2000年。その背景には、日本社会の人口構造の大きく急激な変化がありました。思い起こすと、私がまだ子どもだった…あれはたぶん1980年代…、100歳と聞くとすごいなぁ!と驚いたもので、身の回りでは100歳の人を見たことがありませんでした。厚生労働省発表の統計によると、1980年の100歳以上の人口は968人だったそうですが、2023年では4万7107人の方が100歳を超えていらっしゃるようです。43年間の間に、日本では100歳以上の方にお目にかかることも珍しくはなくなりました。またその間に、日本での生活スタイルは大きく変化しました。核家族化から最近では未婚率も上昇し、単身家族が増えています。女性の進学率や社会参加の上昇とともに、共働き家庭も増加しました。老々世帯と呼ばれる高齢夫婦だけの世帯や、高齢の単身者も増加しています。介護は家族でするものと考えられていたものが、生活の変化によって、家族内での介護が難しくなったことが、介護保険制度ができた背景にあります。

介護保険制度の登場から24年が経ち、利用も広がり、今では高齢になり単身で暮らしていて、身体機能が低下してきても、ヘルパーの利用や訪問サービス、通所サービスの利用などにより、在宅で最期まで暮らすことも可能になりました。定期的にヘルパーさんが来て、週に数回デイサービスへ行き、配食弁当が夕方に届き、ベッドやシルバーカーをレンタルで利用するなど、介護保険サービスの利用は心身の機能や個人のニーズに合わせて調整することができます。

私たちの暮らしは、介護保険制度だけでなく、その他さまざまな社会保障の制度の利用により、快適に安全に安心して暮らせるように設計されています。平穏な社会の状態が続けば・・・

しかし、ひとたび、地域が広域に混乱する出来事があれば、その制度の継続は難しくなります。地震や洪水などがあれば、ヘルパーの訪問は難しくなり、デイサービスの送迎も来なくなり、そもそもヘルパーやデイサービスで働く人も被災している可能性もあります。介護保険サービスの事業者は、BCP(事業継続し続けるための計画)づくりが求められていますが、大きな地震が起こると事業者の建物自体も破壊され、継続が根本的に難しくなる場合もあります。1か月前の石川県能登地方の地震でも、廃業する福祉サービス事業者が出てきていることが報じられます。

やはり、暮らしの中で自力で何かを行うことが難しく、何らかの制度を利用している人ほど、何かあったときには、その難しさが一気に現れます。それにより、例えば高齢者や障がいのある人に、被害が集中することになります。

介護保険制度の存在と広がりは、高齢の方と、その家族や周りの人に安心を与えるものですし、実際に暮らしを支えている重要な制度です。しかし、大きな災害が起こると、それらが一気に使えなくなり、その結果、利用者が一気に暮らしの中で窮地を迎えます。

防災を考えるとき、個人個人はまず、自身の身を護る準備をすべきですが、同時に、政府や行政など、制度を作り運用する側は、その制度が持っている大きな力と、それが急になくなることの影響を考えておかなければなりません。これらのことは、何かが起こってから考えると、ごく当たり前のことです。しかし、介護保険制度が始まった後の長い間、「災害時」は非日常のものとしてとらえられ、日々の暮らしのどこかにあり得るものだという用には考えられていませんでした。そして、その災害時と平時の制度の分断の影響は、制度を利用する人たちに大きなマイナスの影響をもたらしてしまっています。

能登での地震から1か月がたち、1,5次避難所のことや、福祉施設やサービスのことなどが、徐々に報じられ、その課題を知ることができるようになってきました。今後の生活再建の方策の中に、想定された平常時とは異なる状態でも継続的に提供される介護や医療、福祉的サービスが実現されるよう、考えていかねばならないのだと思います。

同時に、今現在は平時の暮らしが継続されている地域でも、介護サービス等の継続を含めた、災害発生時の行動計画や準備を、進めていかなくてはなりません。

私たちにできる準備をすすめておきましょう。そして、被災地の再建に向けて、できることを続けていきましょう。

これは何でしょう。答えは、笛です。ペンダントになった「助けを呼ぶ笛」です。日ごろはアクセサリーとして、いざとなったら助けを呼ぶ道具として活躍するはずです。私自身のために役立つかもしれません。誰かのために助けを呼ぶことになるかもしれません。持っていますか?助けを呼ぶ笛を。「どこかにあったはず」では、助けを呼ぶ前に笛を探す羽目になりますが、実際は、探している場合ではないでしょうから、笛が役目を果たせないことになります。もしかして、笛なんて持っていませんか?「あぁ、あの時、カナリア倶楽部で読んだのに…」と思うことがないように、ぜひ、どんな形でもいいので、鳴るもの導入をご検討ください。そして、時々、迷惑にならない場所で吹く練習もしてみましょう。

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兵庫県在住。「福祉×ICTで、毎日を安心安全に、心豊かに。あなたに寄り添う相談援助」をモットーに『森のすず社会福祉士事務所』開業。成年後見等による高齢者・障害者支援、認知症の方と家族の支援ならびに防災と福祉の地域啓発活動、スクールソーシャルワーカー、各種研修講師などの活動に取り組んでいる。2022年から同志社大学社会学研究科の後期課程博士課程院生。カレーと豆好き。犬大好き。社会福祉士、公認心理師、防災士。介護支援専門員。第1種大型自動車免許、2級FP技能士、第2級アマチュア無線技士。