前回の記事で国立大学法人法の改定案が、異例のスピードで審議入りしていることを書きました。12月に入り、参議院での審議が始まりました。それに合わせて署名の提出がありました。
大学が国家権力に取り込まれれば、真理を探求する手立てはなくなる。
真理は政治と無関係に在る。そこに近づくことを予め政治に放棄させられている、そんな国にしたいか
税金投入する以上、国家介入を認めるべきとの立場は真理探究や公共性の議論から遥か遠い
岐路であるhttps://t.co/e13cYITqv6 pic.twitter.com/nesi1DBOEo
— 工藤剛史 (@kudo_letranger) December 2, 2023
学生有志のものもあります。
【国立大学法人法「改正」に反対する学生有志・声明】
私たちは本法案に反対する学生有志であり、ここに声明を発表します。
ご賛同いただける方は、リプライのフォームよりご署名をお願いします。現在、隠岐さや香先生(東京大学)にご賛同をいただいております。#国立大学法人法改正案に反対します pic.twitter.com/WcfWA3qcbL— 国立大学法人法「改正」に反対する学生有志 (@kokudaihoustnet) November 24, 2023
前回は、国立大学法人に設置が義務付けられる運営方針会議(大学の最高意思決定機関)メンバーの任命に文科大臣の承認が必要であることが、大学の学問の自由にとどめを刺すことについて書きました。今回はそれに加えて、「稼げる大学」を作るという方向性が強化・強制されることが、学生生活に与える影響について書こうと思います。
本法改定では、大学の債権発行が大幅に緩和されます。そして実際に少なからぬ大学で、債権発行への機運のようなものが高まっていると聞きます。しかし債権とは借金です。利息をつけて返済しないといけません。
あらためてこの資料を読むとすごいことを書いていると思う。
五神氏が東大総長のときに東大は大学債200億円を発行。年利0.823%でも利子負担は毎年1億円を越える。
東大は簡単には破綻しないだろうから産業界にとって新たな「投資の受け皿」ができたことになる。
さすが甘利明議員に忠誠を誓った総長。 https://t.co/gppkQq3rwQ— Komagome Takeshi (@KomagomeT) November 8, 2023
巨額の利息の支払いをどうするのか。現在最も心配されていることが、大学の土地を「稼ぐ」ために利用することで、そのために学生のための施設を撤去してしまうことです。
この呼びかけ、学生の方にこそ読んでほしい。
ざっくり言えば、大学には運動場も学生控室も学生寮も図書館閲覧室もなくていい、むしろ土地を大企業に「有効活用」して稼いでもらおうという「改正」案。
先生方に「改正案を知ってますか?知らない?それって無責任じゃないですか」と語りかけてほしい。 https://t.co/ixdKkZPsao— Komagome Takeshi (@KomagomeT) November 4, 2023
京都大学ではすでに、保健管理センターの廃止などが行われています。またカナリア倶楽部でも紹介したことのある京都府立大学への巨大アリーナの建設も、背景には「体育館などの学生のための施設を、作らなくても良いようにしていくという規制緩和」の流れがあります。
国立大学の保健診療所(保健管理センターが教職員や学生に治療や投薬をする機能を持つもの)の廃止は京大に限らず多くの大学で進んでいる。自分も昔はホケカンの先生に血圧の薬を出してもらっていた。
— PsycheRadio (@marxindo) August 5, 2022
そして、授業料の値上げも懸念されます。国立大学の授業料はかつて、国全体で上限が決められていたのですが、それはすでに撤廃されています。学生施設のことも授業料のことも、国がしっかりと規制しているから、学生の学習環境が守られるわけで、規制を緩和・撤廃してしまった上で「稼ぎなさい」と言われれば何が起きるか、想像に難くないと思います。
参議院での審議の行方が心配なところですが、あらためて本法改定の問題点を説明している動画を紹介しておきます。前回記事で紹介した動画の内容に加えて、学生施設等への影響が説明されている他、「運営方針会議の設置」が今後は公立大学や私立大学にも拡大されていくことが、国会で明言されたことなどが説明されています。
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