国立大学法人法の改定案が参議院で審議入り

前回の記事で国立大学法人法の改定案が、異例のスピードで審議入りしていることを書きました。12月に入り、参議院での審議が始まりました。それに合わせて署名の提出がありました。


学生有志のものもあります。


前回は、国立大学法人に設置が義務付けられる運営方針会議(大学の最高意思決定機関)メンバーの任命に文科大臣の承認が必要であることが、大学の学問の自由にとどめを刺すことについて書きました。今回はそれに加えて、「稼げる大学」を作るという方向性が強化・強制されることが、学生生活に与える影響について書こうと思います。
本法改定では、大学の債権発行が大幅に緩和されます。そして実際に少なからぬ大学で、債権発行への機運のようなものが高まっていると聞きます。しかし債権とは借金です。利息をつけて返済しないといけません。


巨額の利息の支払いをどうするのか。現在最も心配されていることが、大学の土地を「稼ぐ」ために利用することで、そのために学生のための施設を撤去してしまうことです。


京都大学ではすでに、保健管理センターの廃止などが行われています。またカナリア倶楽部でも紹介したことのある京都府立大学への巨大アリーナの建設も、背景には「体育館などの学生のための施設を、作らなくても良いようにしていくという規制緩和」の流れがあります。


そして、授業料の値上げも懸念されます。国立大学の授業料はかつて、国全体で上限が決められていたのですが、それはすでに撤廃されています。学生施設のことも授業料のことも、国がしっかりと規制しているから、学生の学習環境が守られるわけで、規制を緩和・撤廃してしまった上で「稼ぎなさい」と言われれば何が起きるか、想像に難くないと思います。
参議院での審議の行方が心配なところですが、あらためて本法改定の問題点を説明している動画を紹介しておきます。前回記事で紹介した動画の内容に加えて、学生施設等への影響が説明されている他、「運営方針会議の設置」が今後は公立大学や私立大学にも拡大されていくことが、国会で明言されたことなどが説明されています。

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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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