福祉業界で「金銭管理」の支援というと,1つは「成年後見制度」で,もう1つが「日常生活自立支援事業」.「コウケン」と「ニチジ」という言葉は,福祉的な支援のなかでしばしば登場するのですが,そんな制度があるということが知らないと,『何のこと?』と思われることでしょう.
さて,成年後見制度については,ここで時々取り上げているので,今日は「ニチジ」の方を取り上げたいと思います.
ニチジ,すなわち日常生活自立支援事業とは,厚生労働省のWebによると『認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。』だそうです.(日常生活自立支援事業 |厚生労働省 (mhlw.go.jp))
つまり簡単に言うと,何らかの理由で判断ができにくくなっている人が,在宅生活で困り果てることなく生活できるように,契約して,福祉サービスの利用ができたりするようにお手伝いしますよ~,というものです.
では,その契約を誰と誰がするのか?ということですが,これは,その判断力が低下して不十分になっているご本人と,日常生活自立支援事業を行っている都道府県・市町村の社会福祉協議会(社協)が,契約を結びます.
なので,もっと簡単に言うと,判断ができにくくなっている人が,在宅生活で困った状態になっているのであれば,ご本人が社協と契約すれば,社協の職員さんが,生活の中のある種のお困りごと解決をお手伝いしますよ,というもの.
では,何のお手伝いをしてくれるかというと,まず代表的なものが「金銭管理」です.『通帳がなくなった!生活費が下せない!!困った…』という状態しばしば見舞われる方や,『年金が入ったから,使ったら使い切ってしまった…お金がない,ご飯買えないどうしよう』という状態になりがちな人や,『なんかお金の管理ができなくて,ガスや電気がしょっちゅう止まって…』と言いう状態の方などは,利用すると良いかもしれません.
つまり,以前はできていたのに認知症になって忘れっぽくなってできなくなった,とか,以前は同居の家族が金銭管理をしていたけれどいなくなって金銭管理を自力でするしかなくなったけどできていないとか,そのような場合に社協の職員さん(専門員さんや支援員さん)が,定期的にお金を届けてくれたり,光熱水費等の支払い状況を確認してくれたりします.
「自分のお金だから,自分で管理したい」という気持ちは,誰にでもあるものです.ですから,金銭管理や財産管理の制度の利用には抵抗を感じる方も多いと思います.カレンダーや手帳などで工夫して,支払いや予定の管理が自分でできればよいのですが,記憶力が低下したり,予測や計算ができにくいと,「計画的に何かをする」ということは,どうしても難しくなります.
日常生活自立支援事業は,地域に根差した福祉の支援を行う社会福祉協議会が,本人との契約に基づき,ご本人のお金をご本人の生活を安心安全で,暮らしを楽しく豊かにするために使用できるようサポートしてくれるものです.また,金銭管理だけではなく,介護保険サービスや障害福祉サービスなどの福祉サービスの利用の手続き,行政へ提出する書類とうの手続きなどの支援も行ってくれます.
利用するには,ご本人が判断力が不十分であるものの,契約する能力があること(制度を理解して,契約内容が理解し納得して契約できること)が前提です.金銭管理では,年金等の管理も含めて金銭管理のために通帳を社協に預けることになるので,しっかりと説明を聞き,納得できるまで確認することがたいせつです.
なお,「移動が困難だから,私の代わりに銀行へ行ってきてお金を出してきてくれる」サービスではありませんので,認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方が対象です.また,利用にあたっては利用料が設定されている場合があります.詳しくは,お住まいの地域の社会福祉協議会(社協)に尋ねてみてください.