1つのまとまった記事にするほどの情報量があるわけではないのですが、カナリア倶楽部でこれまでにも取り上げてきた話題に関連して、「これは気になる!」というtweetを本日は紹介します。
1.延期になっていた大学入試「改革」のその後
大学入試のいわゆる「一次試験」、大学入試センターテストが2021年1月に行われた試験から、「共通テスト」に衣替えしました。この変更にはもともと、英語の民間試験導入、国語等での記述式問題の導入という大きな「改革」が予定されていましたが、多くの問題を孕んでいるものを強行しようとしたのが裏目に出て、高校生などの猛反発を招くことにもなり、「延期」となっていました。そしていつのまに、「再延期」となった模様です。
息の根止めた👍✨
共通テスト利用は止めました#νガンダムは伊達じゃない#教育の機会均等共通テスト、英語民間試験も再見送り 記述式に続き – 日本教育新聞電子版 NIKKYOWEB https://t.co/tmpbiu56A3
— Kaori Suetomi 💫νガンダム発進! (@KSuetomi) April 22, 2021
大学入学共通テスト 英語の民間試験導入、実現困難な情勢に(毎日新聞)https://t.co/n4iwX0XLqe 問題の山積が今頃に会議で追認され、計画が白紙に戻される「見通し」と。これを柴山昌彦担当相以下がごり押しして実現される直前まで進んでいたことに、いまさらながら寒気がする。五輪も同様に撤回を。
— Hemmi Tatsuo (@camomille0206) April 23, 2021
再延期自体は当然のことと思いますが、このままズルズルと宙ぶらりんな状態が続くと、日本の大学入試制度が持たなくなります。例えば大学入試センター試験時代は、全国の(比較的若い)大学教員を問題作成者として地道に選抜、養成して、良質な問題を作り続ける体制を維持してきていたそうなのですが、こういう仕組みがストップしたままだとすれば、ゆくゆくどうなるのか…と危惧します。
大学入試センターの財政事情も、少子化による受験生の減少で心配な状況です。
【独自】共通テスト「このままでは実施困難」入試センター赤字13億…24年度試算https://t.co/9Ne6Stt0Hm#教育
— 読売新聞 教育 (@YOL_kyoiku) April 9, 2021
成績提供手数料: 570円(2020)→750円(2021)→1200円(2022)→1500円(2023)
こちらも会場、試験監督などで相応の協力をしているのに、ここまで乱暴な値上げを一方的に決めるなら、成績提供にかかるコストが3年間で3倍近くになる根拠を示せ、と言う大学も出てくるのでは?→https://t.co/Aii52YeCxo
— 羽藤由美 (@KITspeakee) April 11, 2021
素朴な疑問なのですが、記述式試験の導入による採点業務をある企業に委託する予定だったわけですが、そのお金はどこからだすつもりだったのでしょう…。
2.授業料免除を申請した学生の個人情報が外部提供対象に
2017年度から、国が保有する個人情報について、その情報を有する機関が提供できる情報の一覧を示し、民間からそれらを使った利活用の提案があった場合に、審査を経て提供する仕組みがスタートしています。この情報提供の内容に、国立大学で授業料免除を申請した学生の個人情報(家族の収入、母子・父子世帯、障がい者世帯であるかなど)が含まれているとの指摘が、国会でなされました。
全国30の国立大学が2020年度、授業料免除を申請した学生の個人情報を記録したファイルを外部に提供しようとしていたことが明らかになりました。一部の大学は障害者の家族の有無や生活保護の有無などの情報も提供対象にしており、個人情報保護のあり方が問われそうです。https://t.co/84FRiTrLCP
— 毎日新聞 (@mainichi) April 20, 2021
一橋大、横浜国大、新潟大、富山大、静岡大、愛知教育大、大阪大、岡山大、広島大、山口大、鳴門教育大、香川大、愛媛大、高知大、九州大、佐賀大、鹿児島大、鹿屋体育大、琉球大
匿名化したとはいえ、何のためにこんな重要な情報を外部に提供するのか、知りたい。— 山口二郎 (@260yamaguchi) April 22, 2021
実は年末に、学校時代の成績とマイナンバーカードを紐づけるという記事が出たことがあります。審議会などで、そういう議論をした人はいたようですが、それが決定されたわけではさすがになく、当該の記事は先走り(誤報)だったということではありました。ただ個人的に暗い気持ちになったのは、その「誤報」のニュースへのコメントに、データ分析の専門家である人々から、「大歓迎」という趣旨の意見が複数寄せられていたことです。データを分析して、さまざまな知見を得たい人にとっては、確かに「大歓迎」でしょう。しかしその前に、そのデータの対象である一人一人の子どもたちがどういう気持ちになるのかを、慎重に考えてほしい(要するに研究倫理の問題)と思いました。
今回の授業料免除申請の情報提供も、同じような問題が根っこにあるような気がします。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。