大学入試「改革」問題のその後&国立大学が学費減免申請に係る個人情報を提供可能に

1つのまとまった記事にするほどの情報量があるわけではないのですが、カナリア倶楽部でこれまでにも取り上げてきた話題に関連して、「これは気になる!」というtweetを本日は紹介します。

1.延期になっていた大学入試「改革」のその後
大学入試のいわゆる「一次試験」、大学入試センターテストが2021年1月に行われた試験から、「共通テスト」に衣替えしました。この変更にはもともと、英語の民間試験導入、国語等での記述式問題の導入という大きな「改革」が予定されていましたが、多くの問題を孕んでいるものを強行しようとしたのが裏目に出て、高校生などの猛反発を招くことにもなり、「延期」となっていました。そしていつのまに、「再延期」となった模様です。


再延期自体は当然のことと思いますが、このままズルズルと宙ぶらりんな状態が続くと、日本の大学入試制度が持たなくなります。例えば大学入試センター試験時代は、全国の(比較的若い)大学教員を問題作成者として地道に選抜、養成して、良質な問題を作り続ける体制を維持してきていたそうなのですが、こういう仕組みがストップしたままだとすれば、ゆくゆくどうなるのか…と危惧します。
大学入試センターの財政事情も、少子化による受験生の減少で心配な状況です。


素朴な疑問なのですが、記述式試験の導入による採点業務をある企業に委託する予定だったわけですが、そのお金はどこからだすつもりだったのでしょう…。

2.授業料免除を申請した学生の個人情報が外部提供対象に
2017年度から、国が保有する個人情報について、その情報を有する機関が提供できる情報の一覧を示し、民間からそれらを使った利活用の提案があった場合に、審査を経て提供する仕組みがスタートしています。この情報提供の内容に、国立大学で授業料免除を申請した学生の個人情報(家族の収入、母子・父子世帯、障がい者世帯であるかなど)が含まれているとの指摘が、国会でなされました。


実は年末に、学校時代の成績とマイナンバーカードを紐づけるという記事が出たことがあります。審議会などで、そういう議論をした人はいたようですが、それが決定されたわけではさすがになく、当該の記事は先走り(誤報)だったということではありました。ただ個人的に暗い気持ちになったのは、その「誤報」のニュースへのコメントに、データ分析の専門家である人々から、「大歓迎」という趣旨の意見が複数寄せられていたことです。データを分析して、さまざまな知見を得たい人にとっては、確かに「大歓迎」でしょう。しかしその前に、そのデータの対象である一人一人の子どもたちがどういう気持ちになるのかを、慎重に考えてほしい(要するに研究倫理の問題)と思いました。
今回の授業料免除申請の情報提供も、同じような問題が根っこにあるような気がします。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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