省庁の縦割り打破の一環として「子ども庁」を創設すると、今月に入って菅首相が述べています。そのトップに就任を依頼されているのが二階幹事長だというニュースもあります。二階氏が子育て政策に詳しいという話は、個人的には聞いたことがないのですが、「子ども庁」を作って具体的に何をしたいのかは明らかになっていません。そもそも「子ども庁」の目的も不明確です(縦割り打破は手段であって目的ではない)。子どもの福祉の向上が目的なのか、少子化の抑止が目的なのか、それとも他の目的があるのか、今のところはわかりません。
明確にされていないことだらけですので、賛成とも反対ともいえない状況ですが、遠くない時期に選挙があることでもありますし、首相の「縦割り打破への意欲」ではなく「子ども庁を作って何をしようと思っているのか」にこれから注目をする必要があると思います。
注目ポイントの1つは、子どもの育ちに関わる公費支出が増えるのかどうかと、仮に増えるとしてそれが適切に使われるのかということでしょう。
ヒトとカネ増やさない子ども庁は政策の弱体化につながります!
高所得世帯の児童手当特例給付廃止から目を逸らせる作戦?子ども若者特定財源と保育士児相職員等の待遇改善や中央地方の公務員増やす確約なければ今より悲惨な未来しか想定できません!#子育て罰をなくそうhttps://t.co/clBYKRT7Xu
— Kaori Suetomi 💫νガンダム発進! (@KSuetomi) April 1, 2021
実際のところ、増額された予算が、家庭でも教育・保育現場でもない市場に流れるという推測も飛び交っているようです。
自民党が子ども庁と言い始めると、反応し、歓迎するのは、教育関係者でも、福祉関係者でもなく、株式市場だという現実をよく見るべきである。https://t.co/pzJg5sZG6f
— 渡辺輝人 (@nabeteru1Q78) April 5, 2021
このようなサイトも見つけました。リンクを貼るのもどうかと思いましたので、スクリーンショットです。「国策テーマ株」という言葉があることを初めて知りました。
子どもの育ち・発達に関連する政策や制度に問題が多いことは事実ですが、それが本当に「縦割り」のせいなのかどうかは、慎重に考えたほうが良いのではないかと思います。例えば保育士の待遇が改善しない(保育士が足りなくて待機児童が多い)原因は、縦割りではなく、予算が不十分だからではないでしょうか。また「子ども庁」は内閣府に設置されるわけですが、文科省や厚労省が持っている専門知が適切に継承されるのかどうかも懸念されます。官邸主導の「教育改革」が暴走してとん挫するのは比較的よくあることで、最近であれば「大学入試改革」をめぐる混乱が記憶に新しいところです。「前例にとらわれずに思い切ったことをする」というと聞こえはいいのですが、思いつきが暴走しないように気を付けたいところだと思います。最後に、「組織いじりの前に予算を増やせ」という前川氏の意見と、「子ども庁」を首相に提案した山田太郎議員のインタビュへのリンクを掲載しておきます。
前川喜平氏 こども庁創設に反対「文科省と厚労省が協力すればいいだけ」 | 2021/4/2 – 東スポWeb https://t.co/z7m7j1ZpJl 「新しい役所をつくればいいってもんじゃない」そうだ!#子ども庁
— 川上芳明 (@Only1Yori) April 4, 2021
繰り返しになりますが、「子ども庁」が何を目的に何をするところなのかは、まだ説明されていません。私たち市民が注目していく必要があると思います。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。