忘れられがちな「話し合って決めていく」ということ

今年に入ってから、教育に関するマスメディアの報道の仕方で非常に気になることが立て続きました。「関係者で話し合って決めていく」という、組織や社会として当然のプロセスの存在を完全に忘却していると思い、それは現在の社会の潮流のようなものを反映しているのだろうと思いましたので、今日はそのことを書こうと思います。
具体的には、奈良教育大学附属小学校をめぐる1月の報道と、大阪公立大学の秋入学をめぐる2月上旬の報道です。奈良教育大学附属小学校のことはカナリア倶楽部でも書きましたが、その後の動きなどがこちらのサイトの下のほうの「リンク集」から確認できます(個人的には、市民集会での中嶋哲彦先生の資料が特にわかりやすかったと思っています)。


奈良教育大学附属小学校では、年度末に多くの教員が出向させられるなど、子どもたちへの教育が安定的に実施できるのかが心配な状況です。ただ今回はその内容には踏み込まず、大綱である学習指導要領の詳細を遵守していないことを「不適切な教育」と断定した報道の仕方を改めて確認したいと思います。教育のような人間と人間が関わる営みにおいて、マニュアルや基準の詳細が、現場判断より優先されるなんてありえません。
「みんなが好き勝手をしだしたらどうする?」という疑問があるようですが、そのために会議などで話し合うのです。職員会議はだからこそ重要です。万能な人間はいないわけですから、話し合いをして決めていくことで、妥当な判断ができます。通常、どのような組織もそうして運営しているはずだと思います。
もう1つは、2月上旬にあった「大阪公立大学で全面秋入学導入」「英語を公用語化」という報道です。これらは誤報だと言ってよいレベルのものですが、元の情報は大阪府市の副首都推進本部会議において、大阪公立大学の理事長と学長が行ったプレゼンテーションです。

大まかな内容は(1)大学院の入学時期の柔軟化(秋入学を含む)を進めること、(2)学部生の一部にも同様のシステムの導入を検討すること、(3)大学院では英語で学位を取得できるコースを増やすことで、「大学院を部局化している大学」であれば、どの大学でも検討していたり実施していたりするような内容です。
副首都推進本部会議の後に吉村知事が記者会見で「全学部でやったら良い」といった発言をし、それが件の報道となったようですが、大阪公立大学の運営方針は知事の独断で決まるわけではなく、関係者が集まる会議体がちゃんと存在しているのです。吉村知事の個人的な感想を決定事項のように報じるのは、どうなのでしょうと思います(「全体での実施を知事が求めた」と記載したメディアもあったようです)。入試の願書提出締め切り直後だったので良かったですが、締め切り前であれば、出願動向にネガティブな影響があったでしょう。。。
会議で話し合って決めていくということは、昨今は政策上も軽視されつつありますが、とても大事なことだと思います。「誰がどこで決めたのか(と言っているのか)」に注目してニュースを見ると、いろいろと気づくことがあるかもしれません。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など


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