奈良教育大学付属小学校が「不適切」な教育を行っていたと断定するニュースが、NHKや民放のテレビ等で報道されました。ご覧になった読者の方もおられるかと思います。学習指導要領に従わない「不適切」な教育があったとするもので、校長と奈良教育大学学長が謝罪したりしています。さらには文部科学大臣まで出てきて、全国の国立大学付属学校をチェックすると言い始めました。
それにしても、なんとも不可解な報道でした。
「不適切」な教育と言ってもその内容は、学習指導要領の詳細部分に沿っていないという程度のことで、そんなものを通常は「不適切」とは言いませんし、各局のTVのニュースになるほどのことではありません。
そもそも学習指導要領とは、あくまでガイドライン的なものであり、すべての学校がその詳細まで従うというものではありません。その法的拘束力の程度についての見解は研究者によっても異なりますが、厳しめの順守を求める立場であっても「1ミリもずれてはいけない」という態度をとることはありません。これらのことについて指摘しているポスト(ツイート)や記事を紹介しておきます。
奈良教育大附属小の件。教育制度研究では立場の違う研究者達も学習指導要領の「そもそも法的拘束力という考え方は教育の具体的な営みに馴染まない」で一致してきました。現実には文科省の監督的行為以上に、学校現場や自治体教委から拘束的な営みは立ち上がる傾向があります。以下は文科省2016年資料。 https://t.co/u7Q6ACOFnz pic.twitter.com/EF74neO6BC
— 桜井智恵子 Chieko Sakurai (@chie_sak) January 18, 2024
盛山文科相は、奈良教育大学附属小学校を批判するより〝支持〟を表明すべきなのでは?(前屋毅)#Yahooニュースhttps://t.co/OjD52CihTR
— 前屋 毅 (@zen_ki) January 19, 2024
奈良教附属小「代名詞の指導不足」という意味不明
やっぱりね。難癖つけているとしか思えなかった。
僕が保護者だったらこの校長を追及すると思うhttps://t.co/LAj1tb9vzF— 町田先生 (@senseioutdoor) January 18, 2024
本当に不可解この上ない状況で、各局のTVで「不適切」と連呼された奈良教育大学付属小学校の先生方や子どもたちがどんな気持ちだっただろうと思うと胸が痛みます。そしてネット上にみられる「ルールを守れ!」という大合唱的な反応には、恐怖心さえ覚えます。
そもそも現在の学習指導要領に則した授業時数は、子どもたちに負担が重すぎることなど、現場からの評判は最低だそうです。
現行授業時数、評価最も低く「子どもに合っていない」学芸大・大森教授が調査 https://t.co/OMJlaUxdqA 〈過去5回の改訂の中で、現在の小学校の標準授業時数が最も子どもの生活や学びの充実に適していない、と考えている教員が多い―。東京学芸大学の大森直樹教授(教育史)が…調査結果を公表した〉
— ばく (@kapibaku) January 22, 2024
おそらくどこの学校でも先生方が、子どもたちの健康や楽しく過ごせる学校生活に配慮して、いろんな工夫をしているはずです。
なお、奈良教育大学付属小学校のこれまでの教育実践は、クリエイツかもがわから出版もされています。
<書評>みんなのねがいでつくる学校
奈良教育大学付属小学校 編
川地 亜弥子 解説
クリエイツかもがわ
子どもと向き合い主体性育むhttps://t.co/i7csEgrBsV— 日本教育新聞 (@nikkyoweb) January 17, 2022
こんな素敵な実践もあったのですね。
「どこかの国が核兵器を持っているからもつのではなく、どの国も捨てるべきです。それができていないのは、勇気がないからだと思います。でも、勇気を出して武器ではなく対話にする」
奈良教育大学付属小の皆さん、ありがとうございました#YesICANhttps://t.co/df9nYK6vSy— Akira Kawasaki 川崎哲 (@kawasaki_akira) June 10, 2020
さて、なぜこのような不可解な報道があったのかについては、様々な憶測が飛んではいるものの、はっきりとしたことはわかりません。昨年に着任したばかりだという校長が、記者会見等で教員団を批判していることから、校長と小学校の教員団との間に不和があったようではあります。
いずれにせよ、学校という場所は、日々子どもたちと接している先生方が知恵を出し合って運営しないと、子どもたちの学びと育ちを支えることはできません。校長が一方的に何かを決めるようなことは適切ではありません。しかも学習指導要領は、国という単位で決まっているものです。そこから少しでもズレてはいけない、ルールを守れ、という姿勢では、子どもたちも先生たちも追い込まれてしまいます。
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