「カナリア俳壇」85

6月だというのに台風が来たり(「台風」は秋の季語です)、早々と真夏日になったりと、異常な天候が続きますが(これがノーマルになっていくのでしょうか)、まずは健康第一。どうぞご自愛のうえお過ごしください。

◎強右衛門駆けし山脈若葉風     作好

【評】「強右衛門」には「すねえもん」、「山脈」には「やまなみ」とルビが振られています。強右衛門は長篠の戦いで大きな功績のあった足軽。郷土の英雄ですね。戦はまさに若葉の時期。すがすがしい句です。強右衛門への思いも伝わってきました。

○山あいの蕎麦屋に入る夏衣     作好

【評】きちんと形の整った句です。目を「夏衣」に転じず、蕎麦屋の風情そのものを写生する手もありそうですね。

○籐椅子に犬が座りて主人顔     白き花

【評】ユーモラスで、情景もよく見えてきます。作者自身が「主人顔」と説明せず、読者に「その犬、主人顔で得意そうにしていたんでしょうね」と言わせるように作れたら、上級者の仲間入りです。

○項垂れて(うなだれて)私道ふさぐや七変化     白き花

【評】よく見かける情景ですね。その点では目新しさはありませんが、句としてはしっかり出来ています。「私道」という必要はありません。「小道」くらいでどうでしょう。

△~○書を詠むに西日すき間を狙ひくる     美春

【評】「読む」の間違いでしょうか。「狙ひくる」が言い過ぎ。また、何の「すき間」でしょう。「書を読めば西日障子の隙間より」などもう一工夫してみてください。

△~○梅雨じめりカランコロンと湯船かな     美春

【評】わずか17音の俳句で「カランコロンと」と7音使ってしまうのはもったいないと思います。それにこれは下駄音を連想させるオノマトペです。「湯船より桶置く音や梅雨じめり」など、もう少し考えてみてください。

△~○バソコンの長き更新梅雨寒し     徒歩

【評】型の古いパソコンだと更新にやたらと時間がかかりますね。句材は現代的ですが、読者としては鬱陶しい気分が先立ち、あまり詩的な高揚感をおぼえませんでした。

○~◎バット持つ腕毛そよげり夏の夕     徒歩

【評】細部へのこだわりが面白い。上五「バッターの」でいかがでしょう。

△~○菜園の新馬鈴薯どんと夕餉かな     妙好

【評】描写がやや平板で、一句のポイントが絞れていません。「掘つて来し新じやが笊に夕厨」などもう少し推敲できそうです。

△~○ざわめきを底に沈むる夜のプール     妙好

【評】少し技巧に走りすぎ、観念的な句になっています。「灯のゆらぎ底に沈めて夜のプール」など具体描写に徹してほしいと思います。

○神の庭老樹の若葉ささめけり     万亀子

【評】格調の高い句です。「老」と「若」の対比に作為が見えてしまいますので(作者としてはそこが一番の工夫だとは思いますが)、「青葉」くらいでどうでしょう。「神苑の老樹の青葉ささめけり」など。

◎路地奥の子安地蔵や夏の宵     万亀子

【評】趣があって大変結構です。季語もぴったり。郷愁をおぼえます。

○病む友を紫陽花寺へ誘いたる     千代

【評】もちろん元気になってから、ということでしょうね。「誘ひたる」と表記しましょう。

○色付きし紫陽花二本朝の卓     千代

【評】それだけでも朝食の卓がずっとお洒落になります。ささやかな贅沢でしょうか。

○風連れて日傘廻してゆく男     永河

【評】「風連れて」とはどういう状況をさすのか、そのへんが読者に通じるかどうかですね。俳諧味はあります。「浜つ風男日傘を廻しゆく」などとする手もあるでしょうか。

△~○梅雨晴れや小皿大皿食器捨つ         永河

【評】「食器」が余分でしょうか。「梅雨晴や大皿小皿みな処分」などもう少し推敲できそうな気がします。

○葉の蔭にとぼけ顔なり擬態の蛾     智代

【評】「とぼけ顔」というのは擬態した翅の模様(大目玉?)のことなのでしょうね。なかなかユーモラスな句です。

△~○サイレンに心騒げり梅雨出水     智代

【評】すなおに詠まれた句です。「心騒げり」は目に見えませんので、これが目に見えるような形で表現できるとさらにステップアップした句になります。たとえば「サイレンに玄関点す梅雨出水」など。

○沙羅の花花が花をと落としけり     ゆき

【評】咲いたその日に落ちるという沙羅の花(夏椿)。その風情を捉えようとされたのですね。もう少し整理し「花に花つられて落ちぬ夏椿」などと工夫できるかもしれません。

△~○指を引く力強き子初夏の昼     ゆき

【評】この子が何歳くらいなのかよくわかりませんが、もしかすると赤ちゃんでしょうか。「赤ん坊の指引く力初夏の昼」としてみました。

◎光秀の逃れし地とや慈悲心鳥     恵子

【評】こういう句の善し悪しは季語次第。「慈悲心鳥」とはよい季語を見つけました。

○~◎光秀の産井に光る蜘蛛の糸     恵子

【評】こちらも写生が効いた上々の吟行句です。「光秀の産井に蜘蛛の糸光る」とどちらがいいでしょう。

△~○まっしぐら待つ子に餌の夏燕     織美

【評】情景はよくわかります。言葉がばらばらですので、もう少し語順を整えましょう。「餌を待つ子にまつしぐら夏燕」。

△~○口開けて待つ子は5羽や夏燕     織美

【評】俳句では算用数字は使いません。「五羽」と漢字にしましょう。擬人化し「口開けて待つ五つ子や夏燕」とするのも一興かもしれません。

○腕の蚊の腹が真つ赤やルビーめく     夏子

【評】眼目がユニークですね。「真つ赤」と「ルビー」が重複していますので、どちらか一方にしましょう。「腕の蚊の膨らめる腹ルビーめく」など。

△~○夏草に埋もれて唸る草刈機     夏子

【評】よくわかる句ですが、草刈機も夏の季語ですので季重なりとなります。「草刈機草の奥より唸りくる」としてみました。

○白川の新茶味はふ二人旅     久美

【評】ゆったりとして充実した二人旅の様子が目に浮かびます。「白川の新茶かぐはし二人旅」とするとさらに句の表情が増すかもしれません。

○弟から若鮎もらひ串を打つ     久美

【評】すなおな作りですが、説明的で散文のようになっていますので、倒置法を用い「串打てり弟くれし若鮎に」としてみました。

○青葉風手足広げてジップライン     翆

【評】ジップラインという言葉を初めて知りました。時速100キロくらいで滑り下りるのですね。その時の風圧を「風」と呼んでいいのかどうか。自分がとまっている時でも感じられるのが本来の風でしょう。季語を「万緑や」くらいでいかがでしょう。

◎父の日に贈る薄手のバスローブ     翆

【評】バスローブがお洒落ですね。けっこうな句です。

次回は7月11日(火)の掲載となります。前日(10日)の18時までにご投句頂けると幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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