学校群構想!?

この記事を書いているのが6月3日土曜日で、明日は堺市長選挙です。記事が公開される時には、選挙結果は確定している予定というタイミングですが、とても気になる情報がネット上を駆けめぐるのを見るようになりました。現市長のもとで堺市総合教育会議が検討を進めてきた「学校群」です。市長選挙の結果がどうなるにせよ、今後、他の自治体でも出てくる話かもしれませんので、紹介しておこうと思います。埴輪のイラスト
選挙が近いこともあってか、Twitterなどで「学校群 堺市」で検索すると多くのTweetがヒットします。そこに書かれている情報は、私が見た限りでは間違ってはいませんが、学校群構想の一部が紹介されているように思います。ここはフェアに考えるために、全体像を示した資料へのリンクを貼っておきます(PDFファイルが開きます)
令和3年度堺市総合教育会議 第3回(令和4年2月17日開催)会議の資料3
概略は次のようなところかと思います。
(1)中学校区ごとに小学校と中学校をまとめて学校群とする
(2)学校群ごとに予算や施設の使い方に裁量を持たせて、新しい学校のスタイルを実現していく
(3)「学級集団」と「学習集団」を区分することで、教科ごとに異なるグループで授業を受けられるようにする
(4)中学校1校と複数の小学校の建物を有効活用することで、余ったスペースを民間等に貸し出したりできるほか、施設を減らすことで維持費や修繕費を節約する

(3)は、すべて(または多くの)科目で習熟度クラスを導入するイメージかと思います(上記資料の5ページ)。小中学生は通常、同じクラスメイトと授業を受けますが、国語、算数、理科などの各科目で一緒に学ぶ児童生徒が異なる(成績順等で学習集団を作るイメージか?)ことになります。この点はTwitterでの指摘を見つけていませんが、実際のところ大問題であるように思います。
他方、ネット上で警戒の声が上がっているのは、(4)の1つのモデルとして挙げられている「キャンパス方式」です(上記資料の8ページと10ページ)。


「理科室はA学校のみ」「音楽室はB学校のみ」などとした上で、それらの施設を使う授業を1日に集約して、児童が「月曜日は理科と算数だからA学校へ」、「火曜日は音楽と体育と国語だからB学校へ」と通学先が変るというものです。子どもたち(特に小学生)の通学の負担や安全性を懸念する声を多く見かけました。
それに加えて私が気になったのは、中学生のことです。各教科担当の先生方は、授業をする他に実験室等の設備の維持管理もするため、例えば理科の先生は理科室のある学校にいなければなりません。しかし同時にその理科の先生は、クラス担任も持ちます。異なる学校に行っているクラスの生徒のケアをどうするのでしょうか? また中学校では、各教科の先生方が「学年団」を組むことで、授業中の生徒の様子の情報交換ができ、困りごとを抱えている生徒へのケアにもつなげているのですが、学年団の先生方がバラバラの学校で勤務するようになれば、そういうことができなくなります。
教育学研究者の方のTweetを紹介しておきます。
少なくとも昨年度までの堺市の総合教育会議の議論では、この「キャンパス方式」は1つの例として示されているのではあります。しかしこういう検討がされていること自体、憂慮をもって注視する必要があるかと思います。


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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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