ふるさとになろうよ(2)

入管法の変更による問題点は前回記事でも紹介しましたが、例えば、難民申請の回数が制限されることで強制送還のリスクが大幅に高まることが懸念されています。それにもかかわらず、このような法の変更をしようとする根拠(立法事実)としては、「送還されるべきなのに帰らない人(送還忌避者と呼ばれる)が多すぎる」ことや、「難民申請をする人たちの中に『本当の難民』がいない」ことが挙げられていました。これらの主張は本当でしょうか?

そもそも、日本の難民認定率が異様に低いことは、前回の記事でも紹介した通りです。仮に欧米並みの認定をしていれば、「何度も申請してくる人がいて困る」という状況は解消されるはずかと思います。こちらのラジオでは、日本で実際に起きた事例が紹介されています。中には、政治犯として母国で逮捕状が出ているにもかかわらず、「偽造ではないか」と疑われ続けた事例や、国連で難民認定されているのに日本では認定されなかった例もあります。


ある難民審査参与の方が、申請者の中に難民はいないという発言を国会等でも行っており、これが立法事実になっています。しかし実際には、ありえない数の申請を処理していると報告していたり、彼女の所属組織が難民認定に係る専門性を否定するなど、証言に不自然・不適格な点があることも指摘されています。


送還忌避者の数についても、入管庁は最初は「統計がない」と言っていました。これ自体も立法事実の存在を否定する答弁ですが、国会でのその後の追求等で「統計はあるが隠匿している」ことが明らかになっています。さて、なぜ隠匿するのでしょうかね?


G7の開催を前に、アムネスティからも懸念が表明されています。


立法事実の怪しさを指摘するよくまとまった記事も見つけました。ぜひこちらもご覧ください。


また立法事実とは異なるのですが、日本の国の中には外国人に対する誤解もあり、それが今回の入管法の変更に係る議論につながっているように思います。


維新の会の梅村議員の発言が話題になっていますが、「非人道的な状態に置かれている人たちを支援する団体をターゲットにする」ことはこの問題以外でもありますが、注意すべきところかと思います。


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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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