新聞社が自治体と包括連携協定を結ぶことについて

新しい年が始まりました。本年もよろしくお願いします。
去年の4月に、日本の報道の自由をめぐる記事を書きました。


民主主義社会の基盤である報道の自由および「権力の番犬」としてのメディアの役割を鑑みたときに、心配になるようなニュースが年末に浮上しました。
読売新聞社と大阪府が包括連携協定を結んだのです。自治体が企業と包括連携協定を結ぶこと自体はよくあることなのですが、今回は連携相手が権力の番犬たるべき新聞社であることが問題視されています。


そもそも日本では政治家と記者が定期的に一緒に食事をするなど、権力とメディアの距離が近すぎる状態にあります。そしてそのことは、海外からも懸念を持たれています。そうであるにもかかわらず、包括連携協定というのはどうなのでしょうか?
読売新聞側は問題ないと言っていますが、そんな簡単なこととは思いにくいです。番犬としての役割を抑制しようとする働きは、権力側からの直接的な介入によらなくても、日常的な雰囲気の中で生じます。


ちなみに、ローソンと大阪府が包括連携協定を結んだ結果、こうなったそうです。


そして実際に新聞でも。


まとめるとこういうこと。


今後はどうなるのでしょうか。


なお個人的に気になるのは、教育への影響です。3年程前のことですが、ある大学の先生がご自身の教育実践を紹介しつつ講演をしているのを聞きました。その実践は、読売新聞社と提携をしているもので、学生は読売新聞を毎日読んで社会情勢や時事問題について勉強し、また社説を毎週(写経のように)書き写すということで、大変に驚きました。確かに読売新聞も含めて新聞は、社会情勢を学ぶには良い教材です。社説もまた、論理的な文章の作り方を学ぶのに良いものかと思います。しかし新聞を使う場合、他の新聞社の記事とも比較検討をすることは必須だと思います。それは読売であろうと、朝日であろうと、何であろうと同じでしょう。
大阪府で行われる教育に、今後どのような影響があるのか(ないのか)、注視する必要があると思います。
なお読売新聞については、こんな指摘もあります。読売だけがどうということではなく、メディアの記事というのは現在進行形の事象を扱うものであるため、書かれている内容の評価は流動的なことも多いわけです。だからこそ慎重な扱いが必要だと思います。


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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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