「子ども庁」の名前、変更して良いの?

「子ども庁」という考えが菅内閣時代に出てきたときに、カナリア倶楽部でも取り上げたことがあります。


岸田政権になり、具体化に向けた検討が進んできました。この経緯の中で、組織の名称は虐待被害者の声なども聞いた上で「子ども庁」に決まっていたのを、突然に「子ども家庭庁」に名称変更することになってしまいました。


この変更案に対してtwitter上には、親からの虐待などのために家庭にいることが辛かったという人々などから、失望や懸念の声が上がっています。


私自身も、「家庭」は抜いて「子ども庁」が良いと考えます。理由は3つあります。1つは「家庭」に恵まれない子どもたちのことを考えるべきだからです。そういう子どもたちは、家庭に恵まれた子どもたちよりも、何かにつけて不利な状況にあり、社会の支えを必要としています。政治はそういう不利な状況にある人々にこそ、目を向けるべきでしょう。
2つめは、親が子どもを適切に養育できない理由は様々ですが、それが経済的な理由であれ、精神的・体力的な力量の問題であれ、「親としての心得」のようなものを説教すれば改善するというようなものではないからです。「家庭の大切さ」を説くことは、子どもの助けにはなりません。むしろ、よりしんどい気持ちにさせます。
3つめは、そもそも日本の政策は「育てる」「世話する」「看病する」といったケア役割を家庭に押し付ける傾向があり、そのことが特に女性の経済的自立を困難にするとともに、子どもと大人の双方の育ちづらさ、生きづらさを助長しているからです。
子ども庁のあり方の議論の過程では、日本の法体系では手薄な「子どもの権利の保障」をしっかりとやろうという議論も行われたという経緯があり、期待する向きもありました。



しかしこの名称変更は、そのような期待を裏切るものであるように思います。子どもの生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の保障を進めていくような組織にしていく必要があります。
———–
西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 21

Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 30