ヤングケアラーと若者ケアラー

昨今、ヤングケアラーという言葉が注目されているようです。介護・看護・育児などのケアを必要とする家族のケアを引き受けている子ども・若者のことです。厚労省のサイトなどでは18歳未満の子どもに対して使われる言葉とされていますが、18歳以上の若者も対象にするべきだという指摘もあります。
諸外国ではヤングケアラーやヤングアダルトケアラーという言葉が使われるようですが、日本では「ヤングケアラー(18歳未満)」と「若者ケアラー(18歳~30歳代)」という言葉が広がっている様子です。


実を言うと私自身も、20歳代後半から病気の親を引き取っています。当時はヤングケアラーという言葉はありませんでしたが、若者が看護・介護をしなければならないという状況のしんどさはそれなりに体験してきたと思います。当時はパラサイト・シングルという言葉が流行っていて、その言葉を向けられるのが一番つらかったです。40歳になるころから、「母が私にパラサイト・シングルしているんです。その逆じゃありません!」と切り返せるようになりましたが、その頃には周囲に親の介護をする人たちが増え始めてきて、ずいぶんと生きやすくなっていました。同じように家族の介護を担う人が周囲にいないことは、ヤングケアラーや若者ケアラーのしんどさの大きな原因だと思います。
さらに、若いがゆえに社会についての知識や経験が少なく、大局を見た判断がしにくいこと、親戚などの周囲の圧力に抗いきれないことなども、彼女・彼らをしんどい状況に追い込みやすいと思われます。
6-7年前だと思いますが図書館で、シングル介護(独身の子どもによる親の介護)の特集をしている書棚の前を、通りかかったことがありました。何気なく数冊をペラペラと見ながら驚いたのは、すべての本に共通して「独身だからと言って、仕事をやめてはいけません」ということが書いてあったことです。「『だからといって』ってどういうこと? 独身者が仕事をやめたら、無収入になるんですけど…」と思いました。でも少し考えるとわかりました。「高齢者は子どもと違って年金収入があるし、食べさせなければならない家族(子どもなど)がない独身者が仕事をやめて介護すべき」という安易な判断がなされることが少なくないのですね。これは若者に限った話ではなかったですが、若者は未婚のことが多いので、こういう状況に置かれやすいのかと思います。
また若いうちは給料が少ないために、多めの収入のある親(祖父母の子)などではなく孫に、仕事をやめて担わせるということもあるようです。しかしそれでは孫は、将来に向けたキャリアを積む機会を失ってしまいます。
カナリア倶楽部でも何度か取り上げている大学の学費問題が背景にあるという指摘もあります。


そんな子どもや若者たちを支援しようという動きも出てきつつはあります。


他方で、国でも実態把握を勧めようとしているようですが、調査自体が易しくはないようです。当事者自身が話をしようとしなかったり、自覚がなかったりすることがあるのに加えて、例えば「幼いきょうだいのケア」は日常的なお手伝いと間違って判断されてしまうというような事例もあるとのことです。


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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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