「カナリア俳壇」44

どうやらコロナも収束に向かいつつあるようで、まだ安心はできませんが、もう少しの辛抱と思いたいですね。徐々に春らしさも増してきました。感覚を研ぎ澄ませ、俳句を通じてこの季節ならでは風光を満喫したいものです。

△立春やふはりと透ける鉋屑     妙好

【評】このままですと何が透けて見えたのかわかりません。「ふはりと透ける」という表現にも少し違和感があります。「春の日を透かしふはりと鉋屑」。

△風花の舞へり鴎外旧居跡     妙好

【評】「風花」とは青空のもと雪が舞っていることを指しますので、「舞へり」は不要です。「鴎外旧居跡」で9音も使っていますね。もったいないと思います。「鴎外旧居跡」は前書に移し、その場所の印象的な光景を写生しましょう。

△紅梅やちらほら咲きて春を呼ぶ     蓉子

【評】「紅梅」も「春」も季語。このような季重なりは感心しません。「春を呼ぶ」はカットしましょう。また紅梅といえば、すでに紅い花が咲いている梅のことですから、「咲きて」も不要です。「ちらほら」もありがちな表現。もう一度、じっくりと紅梅を観察して下さい。われわれの先師・細見綾子は、なにかの花を見つけると、その前にしゃがみこみ30分ほど動かなかったそうです。そのくらい向き合うと、花のほうから何か語りかけてくれるのだと語っていた由。見習いたいですね。

△~○山茶花や散りて道端賑やかに     蓉子

【評】中七・下五も同じ山茶花のことですから、上五を「や」で切ってはいけません。
「山茶花の散りて道端賑やかに」。ただし「賑やかに」がやや安易でしょうか。

○木枯しや土間に狭しと鉢並ぶ     白き花
【評】植木鉢でしょうか。「鉢」だけでは不十分です。「木枯や土間に狭しと植木鉢」。なお俳句では一般に送り仮名を省略します。「し」を取り「木枯」として下さい。

△カフェ事情冬の空気と横並び     白き花

【評】「カフェ事情」の「事情」がいけません。「冬の空気」の「空気」もだめ。「横並び」もNGです。世相的なことは言わず、詩情のある俳句を目指しましょう。

△蠟梅や齢重ぬる軒の猫     美春

【評】「齢重ぬる」は観念的です。猫が年老いたと言いたいのですね。どんなところにその猫の老いを感じたのですか。そこを写生することによって初めて俳句になります。

△路地裏の廃家に染みる余寒かな     美春

【評】「廃家に染みる」が漠然としていてよくわかりません。廃家のどこに余寒を感じたのでしょう。そこを写生して下さい。また「路地裏」と「廃家」では何だか暗くて寂しいですね。こうこうマイナス思考で俳句をつくっても心は元気になりません。もっと自らの心を奮い立たせるような句を目指してほしいと思います。「わび・さび」は芭蕉に任せましょう。

○春早し茶亭で憩ふ武将隊     多喜

【評】「名古屋城」の前書があります。そこで何かの行事があったのですね。のどかで、ちょっとユーモラスな景です。としますと、季語があまり合っていない気もします。たとえば「梅東風や茶亭で憩ふ武将隊」などいかがでしょう。

◎開け閉ての固き襖や春時雨     多喜

【評】「固き」という把握が感覚的で、生活感もあり、上々の句だと思います。「襖」は冬の季語ですが、この句の場合は「春時雨」がありますので襖はただの物扱いであることは明白で、問題ありません。

◎旋盤の青き油煙や木の芽冷え     音羽

【評】「青き油煙」に詩情がありますね。寒々とした雰囲気と季語がぴったり合っています。俳句では送り仮名を省略しますので、「え」を取り「木の芽冷」としましょう。

○春光を掴み掴みて児は歩む     音羽

【評】「春光を掴み掴みて」という表現はうまいのですが、やや技巧が目立ちます。「児は歩む」の「は」も強すぎ。「春光や手をひらひらと児が歩む」など上五で切るのも一法かもしれません。

○春光に脚産毛めく百足の子     小晴

【評】ユニークな句材です。春先になると小さな百足(むかで)が出てくるのですね。「春光に」の「に」が理屈っぽくなりますので、「や」で切るか、語順を入れ替え、「子百足の脚は産毛よ春日影」とする手もありそうです。

○枝広げ冬木触れゐる慰霊塔     小晴

【評】どこの慰霊塔か前書がほしいところです。「広げ」「触れゐる」と動詞が2つあるともたついた感じになりますので、そこをすっきりさせましょう。「裸木の枝触れゐたる慰霊塔」など。

○出荷せり葱の香こもる作業小屋     織美

【評】「出荷せり」だともう出荷し終わって、作業小屋には葱がないことになります。とすると、この「葱の香」は残っている匂いのことですね。そのへんをはっきりさせるなら「出荷せし葱の香のこる作業小屋」でしょうか。

△~○室の花母顔色に正気さす     織美

【評】「正気さす」という日本語があるのかどうか。「室咲や今朝穏やかな母の顔」くらいでいかがでしょう。

○濁世や松の根方に竜の玉     徒歩

【評】骨太の堂々とした作風で、大きな寺院の門前や旧家の座敷に掲げると合いそうです。たまにはこういう寓意的な作風で腕試しするのも悪くありませんが、徒歩さんには即物具象一本でやってほしいとも望んでおります。

△クーポンを探すスワイプ春炬燵     徒歩

【評】現代人の生活の一コマですね。スマホ時代の新しい句材を用いた作品ですが、結局のところ日常感覚にとどまっていて、俳句という詩には届いていないように感じます。

△保養地の庭にミモザの咲き初むる     マユミ

【評】句の形はきちんとできており、直す所もありません。しかし保養地の庭にミモザが咲き始めたことが特段驚くべきことなのか・・・。わたしにはその感動が十分に伝わりませんでした。

△抱き地蔵軽しと念ず余寒かな     マユミ

【評】「軽しと念ず」の意味がよくわかりませんでした。「軽くなれ」と念じているのでしょうか。それだと、このままでは言葉足らず。また「念ず」は終止形ですから、ここで切れてしまいます。下五を「かな」で収めるなら、途中に切れを入れてはいけません。「抱き地蔵ずしりと重き余寒かな」など、推敲してみて下さい。

△冬木立抜け来る風の白さかな     万亀子

【評】「風の白さ」が観念的です。雪景色を念頭においての表現でしょうか。冬木立の寒々とした風情を「風」で表現できるといいですね。色彩でいえば「冬木立抜けきし風の蒼みたり」でしょうか。

◎庭の雪斑に溶けて古地図めく     万亀子

【評】これは面白い見立ての句です。ただの地図でなく「古地図」としたことによって一段と味わいが増したように思います。

○潜り出で何食はぬかほ番鴨      永河

【評】「何食はぬかほ」にポイントを置くならば、2羽でなく1羽の鴨にしたほう印象鮮明になるように思います。「番」を生かすなら、2羽でなくてはできない動作を描くとよいでしょう。「潜り出で顔見合はせり番鴨」など。

△草を嗅ぐ犬ひたぶるに梅匂ふ     永河

【評】一句のなかに匂いのことを2つ詠むのはよくありません。草の匂いと梅の匂いのどちらか一方にしてほしいと思います。「ひたぶるに土掘る犬や梅匂ふ」など。

次回は3月2日(火)の掲載となります。前日の午後6時までにご投句いただけると幸いです。皆さんの力作をお待ちしています。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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