2021年最初の記事です。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて年末に、あるコンビニエンスストアのお惣菜商品群の名称「お母さん食堂」に対して、その名前を変更してほしいという要望を掲げて、3人の高校生が署名活動を始めたということが、ネット上で話題になっていました。こちらの記事に詳しく紹介されています。料理は女性がするものというアンコンシャスバイアス(無意識のバイアス)を、助長するような商品名はやめてほしいという主張です。
これを言葉狩りだと揶揄する人は、バイアス(偏見)によって苦しむことがなく、バイアスが強化されても無関心あるいは無視できるマジョリティなんだよね。→ファミマ「お母さん食堂」の名前変えたいと女子高校生が署名活動、「料理するのは母親だけですか?」https://t.co/5kKhU0HduH
— tatuki_h (@tatuki_h) December 29, 2020
年が明けて、ある業者さんがくれたカレンダーの1月のイラスト見て仰天しました。お正月の食事風景で、家族6人(祖父母、父母、10歳くらいの子ども2人)が乾杯をしています。
しかし、お母さんだけが他の5人と違うのです。
他の5人はテーブルについています(椅子に座っています)。それぞれに飲み物を右手に持って、乾杯をしています。
お母さんだけが、左手にジュースの入ったピッチャーを持って立っているのです!レストランのウェイトレスみたいです(左手にピッチャーを持って立ったまま、右手にジュースの入ったコップを持って乾杯しているので、レストランのウェイトレスとは異なっているのですが)。
実際のところ、共働きの夫婦でも妻の側の家事負担が大きいことは周知のことですし、子どものお手伝いでも女の子は多くのお手伝いをしていることがデータで示されています(上記の記事参照)。
もっと深刻な状況として、家族の中に病人や要介護者がいる場合に、そのケアを子どもたちが担っているケースがありますが(ヤングケアラー問題)、女の子が担わされるケースが多くあります。
東京都立大学の乾彰夫先生の研究グループが、都内の高校卒業者を5年間(または12年間)追跡インタビューした研究プロジェクトがあり、その成果が『高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか: 若者たちが今〈大人になる〉とは(大月書店)』という書籍などになっています。ここに登場する18-23歳の若者たちの中に、親きょうだいなどの家族のケアをしている人が一定数いますが、それは圧倒的に女性なのです。研究グループの一人であった杉田真衣さんが、彼女たちをさらに追跡調査して、『高卒女性の12年: 不安定な労働、ゆるやかなつながり(大月書店)』という本を出しています。
杉田真衣さんから、ご著書『高卒女性の12年―不安定な労働、ゆるやかなつながり』 http://t.co/NLY1IDVdkN を頂いた。感謝。ノンエリート女性の労働/生活の変遷を継続したインタビューで明らかにした。12年間という長期の調査に敬服。性的サービス労働に関する分析も。
— 河添 誠 KAWAZOE Makoto @BLM (@kawazoemakoto) July 24, 2015
署名活動を始めた高校生が問題視しているアンコンシャスバイアスは、社会の中の多くの人たちが無自覚に受け入れているバイアスなので、この高校生たちの主張に違和感を感じる人も少なくないのだろうと思います。しかしこのアンコンシャスバイアスの悪影響は、現在の日本の社会に、無視できない悪影響を与えていると思います。
なお、「毎日、食事を作ってくれているお母さんへの敬意だ」という意見もあることは承知していますが、「やりがい搾取」という言葉もあります。
やりがい搾取って家庭内でも起こりがちだよなぁ、しみじみhttps://t.co/SCBsOHFtKq
— ぱ (@haruka783640) December 29, 2020
署名を届けられたコンビニチェーンが、高校生たちの真剣な考えと行動を、しっかりと受け止めてくれることを期待したいです。
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