Covid-19感染拡大で異例づくめの年末になりました。今年の締めくくりの記事では、私の中学時代の後輩がやっている学習プロジェクトをご紹介させていただこうと思います。
2019年5月30日のカナリア倶楽部に「学校向け「放射線副読本」の話」という記事を書きました。文部科学省が全国の小中学校と高校に昨年配布した「放射線副読本」の最新版の内容が、なんだか変じゃないか…? 原子力発電の安全性が強調されすぎていて、なおかつ「原子力発電への懸念=福島への差別」という変な理屈が展開されているのではないか、という話でした。
この放射線副読本を読んで、どうもスッキリしない、何かごまかされているような気がすると思った3人の女性たちが、放射線について学びながら、この副読本にどういうごまかしがあるのかを 丁寧に読み解き、解説しているのが、「にょきにょきプロジェクト」による『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』です。冊子を開くと、左側に元の副読本、右側に副読本では隠してあることやごまかしてあることの解説が掲載されていて、とても読みやすいです。
作成に協力しているジャーナリストの守田さんがyoutubeで紹介しています。
この春、文科省発行の『放射線副読本』を読み解いた『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』を作りました。小学生のお子さんをお持ちのお母さんたち3人と守田で作った「にょきにょきプロジェクト」で1年かけてゆっくりじっくり読み解きました。ダイジェストを動画解説しました。https://t.co/qcxGuAzW8Q
— 守田敏也 (@toshikyoto) December 25, 2020
『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』は、にょきにょきプロジェクトのwebページから無料でダウンロードすることもできます。
冊子の製作過程などが書かれていますから、ぜひそれを読んでください。そしてダウンロードまたは製本版の購入に進んでいただければと思います。クラウドファンディングも行っています。
私自身が最も目から鱗だったのは、放射性物質の半減期の話です。放射性物質は時間とともに減っていくのですが、まず半分になり、そしてさらに半分になるという減り方をします。半分になるまでに要する年月を半減期と言います。放射性物質によって半減期の長いものと短いものがあります。
「事故で多く出た放射性物質は半減期が短いものだから…」と言われたら、「それは不幸中の幸いだ」と思ってしまいませんか? 文科省が出した副読本は、まさにこのような誤解を誘導しています。
でも実際は、放射性物質は半減するときに放射線を放出するので、半減期が短いものは、それだけたくさんの放射線を出しているということなのです。その他にも様々な誘導やごまかしを、ていねいに読みといています。
にょきにょきプロジェクトのFacebookページもあります。
動画もあります。
京都で読書会の開催もありました。
副読本の配布から1年半以上が経ちましたが、地道に学びと理解を拡げている人たちがいます。来年もぜひご注目ください。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。