失敗する権利と、成年後見業務

私は成年後見人をしています。主に知的障害のある方のケースを担当しています。

その中で、悩むことが「失敗する権利」と成年後見業務の兼ね合いです。基本的には、「失敗するかも」と周囲が思うことでも、本人が自分で「やりたい」と思うことであればやる権利があります。ただ、この「失敗」が本人の生活に与える影響を考えた時、悩むわけです。成年後見人の職務には、身上の保護があり、以下のようなことです。

「成年後見制度の利用の促進は、成年被後見人等が、成年被後見人等でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと及び成年被後見人等の財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと等の成年後見制度の理念を踏まえて行われるものとする。」

 

例えば、以下のようなときに悩みます。

〇本人が、スマホゲームの課金に夢中になり、衣類を買うお金までゲーム課金に使ってしまう。

〇本人が、異性とご飯を食べに行ったときは、いつも本人がすべてお金を出しておごっているようだ。本人は「おごってあげたい。」と思って、喜んでしているが、利用されているのではないか。

 

「ゲーム課金なんて、よくわからないことに使うより、ちゃんと季節に合った服を買ってきてほしい。」というのは、後見人の価値観の押し付けなのか。いや、身上の保護の観点からして、寒いのに上着も着ないで外を歩くのは風邪をひくかもしれないし、自分の健康を大切にしてほしい。

とはいえ、知的障害がない人でも、ゲームに夢中になってしまう人はいる。

また、異性にご馳走してあげたいという気持ちはわかるのだけど、でも、交際をしているわけでもないし、毎回、支払いをしているのはやはり関係としておかしいのではないか。でも、誰と、どんなふうにお付き合いしていくかは本人が自分の意思で決めることで、成年後見人が口出しをすることではない。とはいえ、おごってあげることで、生活費が足りなくなってしまい、後見人に「下着を買ったらお金が足りなくなった。」とうそをついている姿を見たときに、どうしたらいいかと悩む…。

 

というような悩みです。(事例はフィクションです。)

結論が簡単に出るわけではなく、たいていの場合、関係者で「ケース会議」を開催し、議論します。本人も参加するのが原則ですが、内容がシビアな場合は関係者だけの会議もあります。

しかし、ケース会議をしても、その会議の参加者の価値観がそれぞれであり、また、会議参加者の中での力関係が結論に影響することもあります。

フラットな関係で、本人を中心に話し合い、一緒にどうしたらいいか考えていけるということが大切です。

悩みながら、繰り返していくことになるのだと思います。


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坂本彩(彩社会福祉士事務所) 大学卒業後、20年間、知的障害のある人とかかわる仕事をする。2017年に、独立型社会福祉士事務所を開業。福祉施設のアドバイザーや研修講師、成年後見人の受任、大学の非常勤講師などをしている。障害のある人もない人も一緒に「学び合いの空間づくり」をしていきたい。社会福祉士、介護福祉士、障害者相談支援専門員、そのほか、漢方養生士指導士、漢方スタイリスト、薬膳アドバイザーの資格も持つ。