ダーウィンの進化論の誤解・誤用・悪用

憲法改正を主張する自民党の広報がダーウィンの進化論を誤用(というより悪用か?)しているという批判があがっています。


自民党広報の4コマ漫画に登場する「もやウィン」という人物が、「ダーウィンの進化論によれば、唯一生き残ることができるのは変化できるものである」と述べ、憲法を変えなければならないと主張するのですが、ダーウィンはそんなことを言っていません。
上の新聞記事の中には、東京大の佐倉統教授(科学技術社会論)と進化生物学に詳しい三中信宏・東京農業大客員教授による批判が載っていますが、他にもあります。


良い機会(?)なので、ダーウィンの進化論について手軽に学べるサイトをご紹介します。こちらは東北大学の千葉聡教授による解説。今年の3月4日の記事です。


要点は次の3つ。
(1)「唯一生き残ることができるのは変化できるもの」というのはダーウィンの言葉でもなければ、ダーウィンの考えでもなく、20世紀に入ってから経営者や政治家が使うようになった言葉にすぎない。
(2)「唯一生き残ることができるのは変化できるもの」というのは、進化生物学的にも変。
(3)環境変化に対応するのに有効なのは、多様で非効率で無駄が多いことであり、その逆ではない。
私自身の印象では、「環境に適応するために進化する」のように、目的をもって行われることであるように誤解されることが多いように思います。そうではなく、実際には多様な変異が常に起きていて、その中で環境に適応的な性質をもったものが生き残る(子孫を残す)ということにすぎません。キリンの首が長いのは、生き残るための首を長くしたのではなく、首の長いキリンが生き残ったのです。

さて、さすがに偶然だと思いますが、「100分で名著」というNHKの番組で6月22日からの一週間、ダーウィンの進化論が再放送されました。こちらに番組の概要と「こぼれ話」が載っていますが、これを読むだけでもダーウィンの進化論のエッセンスと、ダーウィンがいかに誤解されているかがわかります。講師の長谷川真理子先生の「皆さん、誤解されているけど、『退化』だって『進化』なんですよ」という言葉は印象的です。


ダーウィンの進化論への誤解、誤用、悪用は、世界各地でみられます。ナチスのホロコーストも一例です。日本でも、障がいのある人々が不妊手術を強制されたという歴史があります。

こういうことを考えると今回の件、単にうっかりミスですで済ましてよいことでもなさそうな気がするのですが…。それどころか、幹事長がこんな発言をしたそうです。実際のところ、件の4コマ漫画は削除されていないようですし、間違いを認める気持ちはなさそうです。


追記:日本人間行動進化学会が6月27日付で、『「ダーウィンの進化論」に関して流布する言説についての声明』を出しました。


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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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