それでも家には帰れないー新型コロナウイルス感染拡大の中で

本日は青年・若者に関する話題を2つご紹介したいと思います。ひとつは日本から海外に留学している学生についてです。一昔前とは異なり、海外留学が一般的になっている(必修にしている大学もある)現在、経済的に余裕のない家庭の学生も奨学金を得ながら海外で学んでいます。けれど新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大をうけて外務省が渡航に関する危険度レベルを引き上げたことに伴い、彼女・彼らへの奨学金が突然打ち切りになったのです。彼女・彼らは緊急帰国するように求められていますが、飛行機のチケットを入手することすらままならない人もいますし、帰国できたとしても「自力での14日間の自主隔離」が求められます。あまりにも非現実的な要請に対して、若い人たちが声を上げています。まずはこちらの画像をご覧ください。

署名集めも行われました。なお現在は状況が改善しており、奨学金打ち切り問題は解決したようです。やはり声は上げないといけません。


他方で、緊急帰国をした学生や、学生に限らず多くの方々の苦境は続いています。それは政府が「入国後は公共交通機関を使わないこと」「14日間、(自力と自費で)自主隔離すること」を要請しているからです。空港の近所に自宅がある人ならともかく、こんなことは無理です。しかも現在は飛行機も減便していて、「成田空港以外には飛行機が着かない」という状況もあるのです。フランスから帰国した学生さんの声です。空港の検疫所も酷い状況の様子です。


新しい署名活動も始まっています。帰国後に14日滞在できる場所を、政府と自治体で協力して用意してほしいというものです。


素朴に疑問なのですが、全国各地の「自宅」から成田空港まで、車で家族を迎えに行ける家庭ばかりだと、日本の政府は思っているのでしょうか。同じようなことは学校の一斉休校の時にも思いました。
残念ながら「家族」とは、決して安全な場所ではありませんし、まして万能な力を持っているものでもありません。こういう状況にいる少女たちもいるのです。


この記事に登場する若い人たちは、上記の留学生のようには声を上げることができにくく、より深刻だと思います。
新型コロナウイルス感染症の話とは異なりますが、明石市の市長さんのインタビューが興味深かったです。「父親のDVで母親は心を病み、パートを辞めさせられそうで、子どもはネグレクトぎみで不登校、奥には認知症の祖母がいて借金を抱えている貧困家庭」を「標準家族」と考えて行政の在り方を探ったら、街が元気になったという話です。


「家族像」を2020年3月現在の実際の家族のあり方にアップデートした上での対策、施策を求めたいです。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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