全国学力テストと経産省主導の「教育改革」の危険

全国学力テストについては、大阪でテストの結果を学校予算や教員の処遇に反映させようという動きが進んでいることに関連して、カナリア倶楽部でも何度か取り上げています。
そのような中、高知県の土佐町議会が意見書を出しました。子どもたちの学力の状況を把握するには抽出調査で十分なのだから、全員をテストする悉皆調査をやめるべきという意見書です。


現在行われている、悉皆調査での全国学力テストは教育基本法違反だという指摘もあります。


1966年に旭川地方裁判所で違法との判決が出たことから、文部科学省は実施を取りやめていたのです。その後、1976年に最高裁判決がでて「試験問題の程度は全体として平易なものとし、特別の準備を要しないものとすることとされ、また、個々の学校、生徒、市町村、都道府県についての調査結果は公表しないこととされる等の一応の配慮が加えられていた」ことから合法との判決が確定しました。
それで今日の全国学力テストが復活しているのですが、今日の学力テストは「特別な準備」を学校が行わなければならないものですし、学校、市町村、都道府県の調査結果を公表しています。
さて、現在は紙と鉛筆で実施されている全国学力テストを、PCで行うようにしようという動きが出てきています。


学校教育が社会の情報化に対応すること自体は必要なことですが、この動きの背景にはいろいろありそうです。学校で子どもたちに一人一台のパソコンを整備するという動きについては、ニュースなどで報道されているのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この政策が文部科学省ではなく経済産業省から出てきた(つまり目的な教育の充実ではなく経済活性化であること)には注意が必要です。


情報技術を駆使した教材や教具を扱う産業(Ed-Techといいます)には、ビジネスチャンスです。


教育関連産業が公教育に入り込んで利益を得ようという動きは、大学入試問題の背後にもありました。ちなみに米国では、公教育がどんどん民営化されていった結果として、公的な学校教育が崩壊状態にあるとも指摘されています。その米国の企業が、日本の教育を「市場」として狙い、すでに入り込んでいます。


この問題については、また後日に記事にしたいと思います。

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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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