第3回です。鹿児島県の離島「与論島」に、脳性麻痺で電動車いすの人と一緒に行った時の話です。
〈与論島の旅 2日目〉
前日から雷雨の予想。午前中にグラスボードに乗って、与論島の観光名所である「1日に1時間ほどだけ潮が引いたときに浮かび上がる」という沖合の“百合ヶ浜”に行く予定だっただけにとても残念な気持ちになっていました。
それが!朝起きたら晴天!島の人もビックリするくらい暑い日になりました。
百合ヶ浜は、天候や潮の満ち引きで登場する場所も時間もまちまちで、そもそも、潮の加減で浮かび上がらない時もあるそうです。この夏など2回くらいしか上陸できなかったとのこと。その日も船の運転手さんが「近づいてみないとわからないけど、たぶんひざくらいまで水があるでしょうー」と言われていました。
グラスボートには、ボートの運転手さんたちとお手伝いに来てくれた社会福祉協議会の男性あわせて4人で電動車椅子ごと抱えて乗せてくれました。
ボートの先頭の一番眺めのいい場所でタイタニックみたいに風を切って、きれいという言葉じゃ表しきれないほんとうに美しい海を走りました。すごく気持ちいい時間でした。天気が最高で、底まで透明な水がキラキラ光っていました。
「ぼく、よく考えたら、電動車いすになってから船には乗ったことがなかったです。すごく小さな子どものころに家族と乗った記憶があるだけで…。」その言葉が、なにか、心に残りました。
そして、百合が浜が近づいてきたとき、ボートを操縦していた人が、「あ、降りれそうですね!」と!ハシゴをおろして百合が浜に上陸!360度が海!気持ちイイー!
キャッキャ言いながら走り回り記念写真をとりました。さすがに、電動車いすごと浜までハシゴで降りるのは少しむつかしかったので、車いすの方は降りることはしませんでしたが、美しい海は満喫できました。魚もたくさん見れました。なんと、帰りには海ガメも現れてくれました。ウミガメがものすごく早く泳ぐことを初めて知りました。もしかしたら、電動ではなく、普通の簡易車いすを借りてきていたら、浜に降りることもできたかもしれません。でも、ハシゴが少しむつかしいかな。やってみないとわからないですね。
午後は、与論小学校を訪問し、1〜2年生との交流しました。電動車椅子の人が1人もいない島で初めてみる電動車椅子に興味津々な子どもたち。「このスイッチななに?」「なんで電動車椅子に乗っているのですか?」「いつから電動車椅子に乗っているのですか?」と質問まみれになりました。帰るときには「みっしーとぅーとがなし」(心の底からありがとう)という与論の方言でご挨拶してくれました。とぅーとがなしは、尊尊我無、と書きます。
夜は、交流会で、美味しいものをたくさんいただきました。イラブチと言う魚がすごくおいしかったです。「ぴゃあすう」という郷土料理もいただきました。そして、なんといっても、「与論献奉」。システムがよくわからないけど、とにかく口上を述べながら何週も何週もぐるぐる盃が回ります。でも、飲めない人には無理強いはしません。飲める人が代わりに飲むシステムでした。楽しい1日がふけていきました。
前回の補足:車いす車両を与論島で借りたい場合、与論町社協に問い合わせてください。車いす車両の貸し出しサービスがあるようです。