「カナリア俳壇」8

後ればせながら新年おめでとうございます。
今年も皆さんのご健吟をお祈りいたします。
今回はご投句がやや少なめですが、1月5日から7日までに頂いた作品をご紹介します。

△押しくら饅頭戦後の子らは洟垂らし     妙好

【評】われわれ中高年の者は皆そのとおりだと共感できる内容です。ただ、これは詩になっているかどうか……。詩には意外性や驚きがなくてはなりませんので。これは常識的な感想にとどまっているように思います。

△~〇 シリウスや野良猫のぞく水鏡     妙好

【評】詩的な要素はありますが、いまひとつ状況がぴんときません。「水鏡」があいまいなせいでしょうか。これは水たまりでしょうね。しかし、厳冬のイメージが強い句ですから、きっと凍っているのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

△冬ぬくし猫が寝そべる産湯の井     もちこ

【評】これはだれの産湯の井なのでしょうか。どのくらい深いのでしょう。猫が寝そべっているということはよほど浅いのでしょうね。もう涸れて水はないのですね。そんなことばかり気になり、心がときめくには至りませんでした。

△上り下り同じバス停冬の凪     もちこ

【評】バスプールみたいな場所にバス停があるのでしょうか。冬のおだやかな日に詠んだことはわかりますが、その他は何も具体的な情景が見えてきませんでした。おそらくかなり田舎なのだとは思いますが。

△吹雪夜やときをり回る換気扇     音羽

【評】まず「吹雪夜(ふぶきよ)」が舌足らずです。「吹雪の夜(よ)ときをり回る換気扇」でどうでしょう。ただし、こんなことはよくあるので、感動するには至りませんでした。

△切干しの乾きし嵩の一握り     音羽

【評】当初は厚みのあった芋が、切り干しにしたらぺらぺらに薄くなってしまった、ということですね。まあそんなものだと思います。ところで「嵩」は高さを表す語ですので、「嵩の一握り」は表現としてちぐはぐな気がしますがいかがでしょう。また、その「一握り」がどうなのか、今一つぴんときませんでした。

△~〇 嫁が君暗きところに箱梯子     徒歩

【評】箱梯子(あるいは箱階段)は旧家などで保存されていますね。わたしも吟行で何度か見たことがあります。「嫁が君」という古い季語と「箱梯子」という骨董的なものの取り合わせは、先人によってほぼ追求され尽くしているので、平成の終わりに敢えて作らなくてもいいのでは、というのが率直な感想です。句材が、というより詠み方がちょっと古い気がしました。

△~〇 指組んで順を待ちたる除夜の鐘     徒歩

【評】「指組んで」というところが具体的で、すこし作者の姿が想像されました。ただ、そこに作者のどんな心情が込められているのか、十分に推し量ることができませんでした。祈りのポーズというわけではありませんよね。

◎ 白衣脱ぐ冬満月を真向ひに     マユミ

【評】一読、詩的なときめきを覚えました。一日の仕事を終えた医師でしょうか。あるいは科学者? 白衣を脱ぎ、生身の人間に立ち返った人が、窓からさしこむ冬満月と向き合う姿がとても美しく感じられます。

△~〇 初日浴び波間柏の貝拾ふ     マユミ

【評】「浪間柏の貝」という言い方がどうでしょう。「ナミマカシワガイ」か、それを略して「マミマカシワ」といえば十分と思います。元旦早々、なにか目的があってこの貝を集めているのでしょうか。わたし自身そのへんがうといため、よく解釈できませんでした。たわむれに貝を拾ったのなら、「初日浴ぶ浪間柏をてのひらに」くらいでよさそうです。

お互い、より高みをめざして切磋琢磨したいと思いますので、今年はすこし厳しめに句を見て参ります。ぜひお付き合いください。つぎは1月29日にアップの予定です。(河原地英武)

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスはefude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。