高齢期の暮らしと住まい(44)

高齢者施設のセキュリティ

昨今は、事故・事件の証拠のため、あるいは犯罪抑止のために監視カメラが随所に設置されるようになりました。先般もサービス付き高齢者向け住宅で、入居者殺人と思われる事件があり、居室への出入りなどが防犯カメラで調べられています。高齢者住宅では、2つの観点で監視カメラが設置されていると考えられます。ひとつは入居者の転倒など事故の早期発見のために施設内の設置、もうひとつは不法侵入監視などのための外部への設置です。しかし、昨今は内部犯行、ようするに職員の虐待の発見などの活用にも繋がっています。

 

自治体も防犯カメラ設置に補助をしている(京都市の例)

どこまで必要か

しかし、安全のためのセキュリティシステムは、時にはプライバシーの問題とトレードオフの関係になります。介護施設などでは、本人というより家族が万が一のために希望するケースも多いようです。居室内設置カメラであれば明瞭にわかりやすいものの、そのリアルすぎる映像は確かにプライバシーの問題は大きくなります。昨今では赤外線などを活用した動きがわかる程度のものなども使われています。さらに、施設を狙った犯罪などの可能性も考えられるため、建物外に監視カメラを増強する施設も増えてきました。しかし、どこまで必要なのか?は難しい問題で、カメラが確実に抑止策になるとも言い切れず、難しいと感じます。

 

監視する=監視されている

一方で、「監視する」ということは「監視されている」ことにもなります。駅のホーム、エレベーター内、建物館内、商店街の各所など、公共の場でも監視カメラの設置は増加しています。筆者の住むマンションでも共有スペース、建物外などには監視カメラが設置されています。顔認識システムがパスポートコントロールに利用されるなど、映像による本人確認の精度は驚くほど高まっています。犯罪者の捜査に役立つとは思うものの、我々個人の行動が全て把握され、個人情報と繋がってしまうということにもなります。テクノロジーの進化は、メリットと併せてなんらかの不自由さも発生させてしまいますね。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。

 


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