かわらじ先生の国際講座~アメリカ、そして沖縄

まずは先月26日の日米首脳会談はうまくいったのでしょうか? アメリカは貿易赤字問題で、日本に厳しい制裁措置をとることも予想されていましたが・・・

それはひとまず回避されました。年が明けてから「物品貿易協定」(TAG)と呼ばれる二国間協定のための交渉を本格化させることになりました。つまり来年初頭まで問題は先送りされたわけです。

よくトランプ大統領がそれで満足しましたね。

いえ、トランプ大統領は日本から「勝利」を勝ち得たと認識しています。彼は26日の記者会見で、「日本はようやくアメリカとの二国間交渉をやる気になった」「日本はアメリカからすごい量の防衛装備品を買うことになった」とその成果を公表しました。

日本側の報道とはずいぶん違いますね。日本政府の言い分を聞くと、何とか日本の利益は守られたと解釈できますが。特に安倍首相が大量の防衛装備品を買う約束をしたという話は、トランプ大統領が言わなければ、日本国民は知りませんでした。

菅官房長官は翌27日の記者会見で、日米間に貿易や投資をめぐる秘密の合意事項は一切ないと明言しましたが、トランプ大統領の発言を聞くと、疑わしくなってきます。いずれにせよ、日本が窮地に追い込まれたのは確かでしょう。

と言いますと?

日本は今までTPPなど多国間協定の枠組みのなかで、アメリカとの関税問題も対応しようとしてきました。しかし日本は、いよいよアメリカと一対一で話し合わなくてはならなくなりました。もう逃げ場はありません。アメリカの圧力をもろに受けて、日本政府が踏ん張れるかどうか。朝鮮半島の非核化や平和が現実的な政治日程に上っているというのに、膨大な防衛装備を購入するというちぐはぐさ。この一事をとっても、いまの日本政府はアメリカの要求を受動的にのんでいるのではと危ぶまれます。

貿易問題は自動車産業をはじめとする日本の製造業、そしてコメや食肉の生産に従事する農業関係者の生活に直結する問題ですが、日本政府はその利益を守れますか?

守ってもらわなくてはなりません。政治家は国民を信頼し、その支持を力に変えれば大きな仕事ができます。今までの政府はその点に難がありました。森友問題、加計問題、自衛隊の日報隠し問題、公文書改ざん問題など、国民の不信を強めるスキャンダルが多すぎました。本日、内閣改造が行われ、新人事が発表されました。今後どれだけ透明性のある政治を行うことができるか、国民は注視したいですね。

アメリカとの問題では、長年の懸案である普天間飛行場の移設問題もありますね。

はい。沖縄知事選における玉城デニー氏の当選は、この米軍基地問題に対する沖縄世論の明確な回答だと解さなくてはなりません。安倍首相は記者団に「選挙結果を真摯に受け止める」と述べたそうです。沖縄の声を日本の国益に反するものとする従来の立場は、もう通用しないと感じます。むしろ日本の真の国益のために、普天間と辺野古の将来についてアメリカと再交渉できるかどうか。ここが日本の未来を左右する大きな岐路ではないか。そんな気がします。

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河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。