はいせつよもやま話~便利さの実感がないと使う気にならない

大学時代の友人がALSになりました。つい先日まで市民マラソンにいつも参加するほど元気な人だったので、病気のことを知り驚きました。お見舞いに行ったときに、彼女は車いすに座っていました。でも見るからに車椅子が合っていなくて「腰が痛い」と言うのです。このまま使い続けていると腰痛がひどくなるので車椅子を替えないといけないんですが、福祉用具の業者さんが2台の車椅子を見せて「どっちが良いですか」と本人に聞いて選んだものだとか。車いすなど福祉用具を決めるときは、衣服を選ぶようなことではなくて、身体の状態に合わせたモノを紹介するのが大切で、適切なモノを選択して勧めるのが福祉用具を扱う方の役割なのです。彼女が選んだ車いすは彼女の状態には全然合っていませんでした。だけど、本人は「これ以上面倒をかけるのは悪いから、これでいいや」と思ってしまっていました。自分に合う車いすなら移動も楽にできるし、トイレも自分で行けるなど、車いすを良いものに変更したことで何が変わるのか、その暮らしのイメージを持たないと、現状で妥協してしまうのだと感じました。
彼女は携帯電話を使うくらいで、パソコンなどには関心がありません。でもできれば自分の病気についての情報を収集すれば、彼女が寝たきりになったときでもコミュニケーションがとれます。呼気センサーや瞬きセンサーなど、さまざまなモノが開発されているのです。文字入力も指でなくても行えますから、その練習ができれば筋力が落ちても意志が伝えられます。ベッドの背上げも自分で操作出来、環境がガラッと変わって、とても便利になり得るんです。でもその人自身が用具を使って広がる生活の実感がないと、いくら人に言われてもイメージがなかなか湧きません。思えばずっと以前、まだ私がパソコンを使っていない時に、使っている人に「こんなに便利だよ」と言われたって、そのときにはあまりピンときませんでした。ですから「まだまだ要りません」って当時は思いました。福祉用具って馴染みのない用具ですから、病を抱えた時に「これが便利です」って言われても、「いいです、お金もかかりそうだし」となってしまいます。用具を使って広がるしのイメージをどうすればもっていただけるのかが課題です。もちろん福祉用具を扱う方々の知識や経験も重要ですが。

ALS・・・筋萎縮性側索硬化症。手足や喉、舌など呼吸に必要な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患。進行を遅らせる薬はあるが、治癒のための有効な治療法は現在確立されていない。

「高齢生活研究所」所長 浜田きよ子さんの排泄や福祉用具にまつわる話を、毎月紹介していきます。前回はこちら。排泄に関する相談は排泄用具の情報館「むつき庵」まで。


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