アメリカは中国製品に矢継ぎ早に関税を課していますが、EUや日本をも貿易において敵視していますね。
はい。この表をご覧ください。アメリカに赤字をもたらしている国として中国が突出しています。ついでメキシコ、日本、ドイツという順になりますが、EUを一国扱いにすれば、中国の次の第2位ということになります。↓
なぜアメリカは貿易赤字国になってしまったのですか?
よく言われるのは、アメリカの国際競争力が落ちて、アメリカの製品が海外で売れなくなったという見方です。つまりアメリカ没落説です。しかし、それは必ずしも正しくありません。
と言いますと?
たしかに自動車などは、日本製のほうが売れ行きはよいでしょう。しかしアメリカがまさっている分野はいくらでもあります。そして現に、いまもアメリカは世界最大の経済大国です。それによく考えてほしいのは、個人でも国家でも、貧しくなれば購買力は落ちます。物が買えなくなります。貿易赤字とは輸出(売り)より輸入(買い)が多いことです。これはつまり、外国から物を買うだけの経済力があることを意味します。貧しい国は外国から買いたくても買えないのです。貿易赤字は富裕な先進国の証だということもできます。
つまり貿易赤字自体は悪いことではないということですか?
そのように唱える経済学者も少なくありません。アメリカの信用度が高いから、他国はアメリカに物を売り、ドルを稼ぐわけです。つまりドルに信用がなければ、だれもアメリカに売りたがりません。またドルは事実上、世界の基軸通貨ですから、ドルの信用のためにも価値は落とせません。ドル安になれば、アメリカ製品は相対的に安くなり、外国に売りやすくなるでしょう。しかし、そうなればアメリカの信用も下がり、世界経済は混乱をきたします。結局、世界経済の安定のためにはドルが一定水準以上の高さを保たねばなりません。その高いドルを求めて、世界の商品はアメリカ市場に入ります。その結果、アメリカは貿易赤字とならざるをえない。
つまり貿易赤字はアメリカの強さの証明だということでしょうか?
そう言っていいと思います。それにアメリカはもともと消費大国です。GDPの70%が消費と言われます。国内製品だけでは需要を賄えないため、輸入が増えるので、貿易赤字はアメリカの国内事情にも理由があります。実際、アメリカはずっと好景気が続いています。国民の購買力がとても高いのです。トランプ大統領はアメリカの貿易赤字を持ち出して、アメリカが被害者であるかのような言い方をしますが、決してそのようなことではありません。
では、貿易赤字の元凶であるとされる中国などに責任はないということですか?
実は中国にも、人民元を不当に安くして輸出攻勢をかけている面があるのは事実です。また日本も、非関税障壁と言われる目に見えない貿易の壁をつくっている面は認めなくてはなりません。このへんは冷静にアメリカと交渉して改善すべきところでしょう。しかし、トランプ大統領が一方的に被害者意識をあらわにし、関税を引き上げるなどの強硬手段をとることには違和感があります。アメリカは本当に貿易の被害者なのか。どうもトランプ大統領のロジックには大きな問題があると思えてなりません。
—————————————