高齢期の暮らしと住まい(20)

訪問介護は大きく2種類

介護保険を利用する「訪問介護」と聞くと“ヘルパーさんが自宅にきてお世話してくれる”とイメージする人が多いと思います。その通りなのですが、訪問介護には「身体介護」と「生活援助」の2種類に分かれます。これは制度として明確に分かれますので、たとえば「生活援助」を依頼しているときに「身体介護」をしてもらうことはできません。両者の違いは、簡単にいうと「体に触れる」か「体に触れない」かの違いといってもよいかもしれません。「身体介護」は、たとえば、おむつ交換、トイレ介助、入浴介助、整容、食事をとる介助、などがあてはまります。「生活援助」は、食事作り、掃除、洗濯、などを行いながら利用者の心身の様子など異常がないかも確認します。いずれも在宅介護では利用度の高いサービスです。

 

「生活援助」1ヶ月の利用回数。この回数を超えると自治体への届出が必要に

今回の介護保険改正「生活援助」

今回の改正では、サービス利用時の「3割負担」が新しく制度化されたことが大きな話題になっていますが、個人的にさらに気になっているのが「生活援助の頻回プラン届出制度」です。これは何かと言うと、上記の「生活援助」の利用に関して、要介護度により1ヶ月の利用回数が一定の回数を超えると、自治体に届け出することが必要になるというものです。その回数は、表のとおりですが、これだと1日1回程度です。実質「利用制限」といえます。なぜこういうことになったかというと、「1ヶ月で100回を超える生活援助の利用者がいる」ということを問題視されたからです。でも考えてみてください。1ヶ月100回ということは、1日に3回程度です。たとえば認知症のひとり暮らしの人が、1日3回のヘルパー訪問で生活が成り立っているということは評価できることではないでしょうか。それを一律に「問題視」することはどうかと感じます。実際、生活援助を月90回以上利用している人に対し自治体が調査すると、母数は48件と少ないながら「適切でない」と判断されたのはたったの2件です。

 

不文律のルール

他にも「生活援助」は、もともと「家族同居」の場合は利用できないなどの暗黙のルールがあります。しかし、いくら配偶者が自立とはいえ高齢夫婦で家事が苦手な夫と要介護の妻といった組み合わせでは、生活援助ニーズは非常に高いです。また、介護保険は「介護の社会化」を目指し創設され、国も「介護離職ゼロ(親の介護を理由に会社を辞めない)」をうたいながら、家族同居の場合利用できない、というのは矛盾を感じます。

前回、介護保険料の負担増について述べましたが、40歳以上の保険料負担は今後も伸び続けます。しかし、それと反比例してサービスの利用は制限されていきます。問題意識をもって考えていきたいですね。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。

 


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