6月に入り例年であれば梅雨時期で、昔を思い出すとこの時期はしとしとと雨が降り、紫陽花にはカエルやカタツムリがお決まりの場面でしたが、そういえばここ数年カタツムリなんて見ていない気がします。私がゆっくり紫陽花を見ていないからなのか、本当にカタツムリが姿を消したのか・・・。そもそも、近年では雨がしとしと降ることは稀で、降る時にはバケツどころかタライの水をひっくり返したような大雨が短時間で降ることが多いように感じます。つい先日も、大雨と風で大荒れの一日がありました。
さて、大雨と言えば昨年7月上旬は多量の雨が降り続き、岡山県等では大きな災害が発生しました。私は1か月後に現地の生活相談のサポートスタッフとして岡山市西部に入りましたが、洪水がもたらす被害の大きさを実感しました。
現在、兵庫県内では兵庫県社会福祉士会が福祉専門職向けに防災対応力の向上を目的とした研修を行っていて、私も研修スタッフとして参加しています。そこではケアマネージャや相談支援専門員らを主な対象として、福祉専門職が防災・減災についてどのように支援できるかが伝えられています。そして、その事例の中では昨年の岡山県真備町で起こった屋根まで浸水した災害の中で命を落としてしまった親子の話が紹介されています。
軽度知的障害がある母と子は、母の故郷を離れ岡山で暮らしていました。毎日を平穏に暮らしていた親子には、福祉のサポートは入っていましたが、地域住民との交流を持つ機会はありませんでした。大雨となり避難勧告が発令された際、サポートしていた福祉専門職はSNSを通じて親子に避難するよう伝えましたが、避難先となる小学校の位置を知らないことで逃げられませんでした。この時、それまでサポートしていた福祉専門職は駆けつけることもできず、ただ誰かが声をかけてくれるのを願っていた、と動画の中で語っています。
地域包括ケアシステムの構築等で、病院や施設ではなくできるだけ地域で暮らそうという社会の動きは今後も続くでしょう。介護保険は2000年に始まり、今では高齢者の生活の中にしっかりと定着し、介護や福祉の専門職による在宅生活の支援は身近になりました。いくつになっても身体状況が変化しても在宅生活を続けることが可能になりましたが、一方で、「それまでは近所の人が面倒をいろいろ見ていたけれど、ケアマネが付きヘルパーが入るようになってから、すっかり地域の人とのかかわりはなくなった」という話をしばしば耳にします。
研修の中で、親子の動画を見るたびに、確かに福祉専門職はこれまで利用者さんの地域とのつながりを意識することは少なく、介護保険サービスなどのいわゆるフォーマルなサービスの提供のみに力を注いでいたことを感じます。そして、いざ何かが広範囲に起こった時には、フォーマルなサービスは無力であることが多いものです。
プライバシーを尊重し、個人情報をしっかりガードすることは大切ですが、それと同時に、隣近所と交流があり、何かあれば助け合えるということも、大切です。それは、災害発生時に役立つというものよりも、日々の生活が安心で安全であるためにも必要であり、その延長線上に災害時にお互いに助けあるものにつながるのでしょう。
福祉専門職としては、利用者さんが少しでも地域のなかでご近所さんと楽しく暮らしていけることを目指すとともに、地域社会の一員としては、できるだけご近所づきあいができるように心がけたいと思います。