「貸与型奨学金」保証人から機関保証へ

大学や高校に進学する際、親の所得が低いなどの事情がある場合に「奨学金」を利用する人は少なくありません。日本学生支援機構(JASSO)が平成30年3月に出した資料によると、大学生の2.7人に1人が「奨学金」を利用しています。「奨学金」とわざわざ鍵かっこをつけて書いているのは、返済義務がある「貸与型奨学金」を奨学金(scholarship)と呼ぶのは日本くらいのもので、これが他国であれば学生ローン(student loan)と呼ばれるものであるためです。
現在の日本では、「奨学金」を必要とする学生が利用するのは日本学生支援機構(JASSO)による貸与型奨学金です。日本学生支援機構(JASSO)はかつて「日本育英会」と呼ばれていました。カナリア倶楽部の読者の方には、こちらのほうがなじみがあるかもしれません。
さてその日本学生支援機構(JASSO)が、貸与型奨学金の仕組みを大きく変更することにしました。


現在、学生が「奨学金」を借りる場合には、主に親が連帯保証人になり、親以外の親族が保証人になるという仕組みです。機関保証を選ぶこともできます。「奨学金」の返済に苦しむ元学生を支援している団体などでは、機関保証を選ぶように勧めていることもあります。ただ機関保証ですと保証料を支払わないといけません(「奨学金」支給時に天引きされる)ので、学生の負担が高まることは確かです。財務省と文部科学省は2020年にも、保証人制度をなくして機関保証に一本化する予定とのことです。
このことについて、ネット上では批判が起こっています。

実は私自身も「奨学金」を借りて高校から大学院まで行きました。また弟の「奨学金」の保証人にもなっています。その経験から言うと、人による保証は危険が高いのも事実かと思います。そもそも親に経済力がないから「奨学金」を借りるのです。子どもの卒業後の人生がうまくいかなかったからといって、親が返せるわけがないのです。また人による保証の場合、親子関係がもつれていたりする場合には、保証人を立てることができずに進学を断念するということも考えられます。そういう意味では、機関保証に全面的に反対とも言いにくいと思っています。
他方で冒頭でも書きましたが、「奨学金」が借金であり、下手をすると住宅ローンよりも高い利子がついてしまうこともあるという現状は、相当程度に日本独自のものです。そもそも日本は学費が高く、経済的に困難な学生への支援も乏しいです。また今回の決定は、「滞納が増えてJASSOが困っているからなんとかしよう」という視点しかなく、滞納せざるを得ない状況に陥らされてる若い人たちのことが考えられていません。大学教育を受けるための家計負担を減らしていく取り組みを全く進めないで、機関保証に一本化するということには、はやり違和感を持つところです。

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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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